拍手ありがとうございます。現在お礼小話は名探偵コナンで三種類です。 「どうして新一お兄さんは志保お姉さんのことを名前で呼ばないの?」 歩美ちゃんの一言に新一さんは飲みかけていた珈琲を吹き出しそうになりました。 阿笠博士の家に宮野志保さんという綺麗なお姉さんが住み始めたのは半年くらい前からです。普段は少し素っ気ないくらい物静かだけれど、僕たちが遊びに行ったらとても優しくしてくれます。実は外国のご両親のところに引っ越していった灰原さんに似ていて、僕はドキドキしてしまうこともあるんです。 この家の隣に住んでいる高校生探偵の工藤新一さんは志保さんと恋人同士で、いつも珈琲を飲んだり食事をしに来ます。突然現れて我儘ばかり言う新一さんに文句を言いながらも世話をしてあげる志保さんは素敵な人だと思います。新一さんは僕たち少年探偵団とも仲良しで学校や事件の話をよく聞いてくれるのですが、そんな時たまに何だか懐かしそうな表情が浮かぶのは僕の気のせいでしょうか・・。 「・・・えっと、歩美ちゃん。何だって?」 「新一お兄さん、志保お姉さんだけは『宮野』って名字で呼ぶでしょ?どうして?恋人同士なのに」 うーん、そう言えば新一さんは僕たちや蘭さんや園子さんは名前で呼んでますけど、志保さんはそう呼びませんね。 「どうしてって、何となくってっていうか・・・。宮野だってオレのこと名前じゃなくて『工藤君』って呼ぶだろ」 何だか誤魔化すような新一さんの言葉に、横からクッキーを食べ終えた元太君が言いました(ああ!元太君は志保さんが焼いてくれたクッキーを全部食べちゃってます・・・)。 「でもよ、ねーちゃんはみんな名字だけど、にーちゃんの場合はねーちゃんだけが『宮野』じゃん。何でだ?」 志保さんは新一さんを「工藤君」と呼ぶように、僕たちもきちんと名字で呼んでくれます。彼女にそう呼ばれると何だか少し大人になったような気がするので、僕も元太君も志保さんの「円谷君」「小嶋君」という呼び方が実はとても好きなんです。でも、確か・・・。 「僕、最初は『工藤さん』って呼んでたのに、新一さんは全然かまわず僕のことはいきなり『光彦』って呼んでましたよ?」 「・・・・・・」 「そうだよねー。ねえどうして?」 「どうしてですか?」 「なあなあ、何でだ?」 「あーウルセーな。オレがあいつをなんて呼ぼうとオメーらに関係ねえーだろ」 僕たちの視線を浴びいた新一さんはそう言って乱暴に傍らの珈琲カップを取り上げ様としました。でも、そんな言い方は無いです。だって・・・、僕が声を上げようとした時、 「関係なくないもん!!」 歩美ちゃんの強い声が響きました。 「だって、歩美は志保お姉さん大好きだもん!新一お兄さんが志保お姉さんにだけ意地悪してたら可愛そうだよ!!」 「そうですよ。志保さんはいつも新一さんにあんなに優しいのに酷いです」 「そうだぞ。仲間はずれは良くないぞ」 「ちょっ、オメーら落ち着けって。オレは別にあいつに意地悪してるわけじゃねーよ」 「じゃあ、志保さんを名前で呼びますか?」 「いや、いきなりそんなこと言われても・・・」 「あ、ホントはにーちゃんの片思いだから名前で呼べないのか?」 「ばっ!んな訳ねーだろ。オレたちはちゃんと愛し合ってんだよ!」 「じゃあ名前で呼べばいいのに。志保さん喜びますよ、きっと」 「もしかして志保お姉さんに呼ばせてもらえないの?」 「ちげーよ。オレだって呼ぶ時はちゃんと呼んでんだよ」 「『呼ぶ時』って何時ですか?」 「夜とか・・・」 「何で、夜になると呼び方が変わるんだ?」 「そりゃ、おまえ///」 「・・・コホン」 わいわい騒いでいた僕たちのすぐ隣で咳払いが聞こえたので、全員で顔を上げると新しいおやつを持ってきてくれた志保さんが立っていました。ちらりと新一さんに向けた視線がものすごく冷たかった気がしましたが、その後いつもの様に優しく微笑んでくれたので気のせいだったみたいです(心なしか新一さんの表情が引きつっている様な気がしますけど)。 「みんな心配してくれてありがとう。でも私は彼の『宮野』っていう呼び方も気に入ってるの。だって私だけ『特別』ってことでしょう」 そう言ってウインクした志保さんはやっぱりとても綺麗でした。 「そっかー。『特別』かあ」 「そうなんですか。そういうの素敵ですね」 「ふーん、そんなもんか。ところで、それ食べて良いのか?」 「ええ、もちろん。ちょうどケーキが焼けたところなの。みんなでお茶にしましょう。博士を呼んできてくれるかしら?」 「「「はーい」」」 志保さんが焼いてくれたアップルパイはとっても美味しかったです。 さて、探偵団が出て行った阿笠邸のリビングでは ①子どもたちに余計なことを言いそうになった新一が志保さんに叱られる ②志保さんの「特別」発言に大喜びの新一が志保さんに迫る のどちらだったのでしょう? by覚蓮常 |
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