「平助ッ!!」


沈んでいく、身体
抱き止めようとしても届かない

平助の背中を赤く彩る、ソレ


音も
声も

光さえも消えて


白黒の世界に
赤だけが鮮明に映って


「…しん、ぱっつぁん…」
「喋るなッ!…喋らないで…っ」
「俺、もう…」


続きを聞きたくなくて
必死に首を横に振る

認めたくなくて
受け入れたくなくて

現実を、拒む


「お願い…ッ平助…!」
「泣かないで…?」
「やだっ、やだ…平助…ッ」


平助がいくら拭ってくれても
次から次へと溢れて

俺の涙も
平助の、血も


それなのに
平助は力なく笑う

つらいはずなのに
苦しいはずなのに

平助は、笑う


「泣き虫…だからな、ぱっつぁん…」
「平助が、拭ってくれるでしょ?ずっと…っ」
「しん、ぱち…」
「拭ってくれなきゃ、困るんだ…平助がいなきゃ、俺…ッ」


優しすぎる笑顔で
強い眼差しで
言葉もなく、諭される

もう拭えないんだと
もう一緒にいれないんだと


「わらって…?」
「平…ッ」
「笑って、新八」


無理だよ
笑うなんて、できない

大切な人が
傷ついてるのに
苦しんでるのに

笑えないよ、平助…


「笑って?新八の笑顔、見たい…」
「明日っ…いくらだって見せてやるから…ッ」


明日なら、笑える
平助がいてくれるなら
いくらだって笑ってやる

願いも込めてそう言ったのに
平助は小さく、首を横に振って

そうした途端

俺の頬に触れていた手が
急に、地面に落ちて


「へぇすけ…ッ!」
「はは…力、入んないや…」


落ちた平助の手を
強く、握って

冷たくなりかけた身体が
少しでも温かくなるようにと


「もう、拭ってあげられない、ね…」
「そんなこと、ない!」


違う

今は疲れてるだけ
少し力が入らないだけ

ねえ

明日はちゃんと動けるでしょ?
涙も拭ってくれるでしょ?

またいつもみたいに
俺を抱きしめて

いっぱい馬鹿やって
くだらない話して
たくさん笑って

ねえ、平助
お願いだから


「独りに、しないで…っ」


あぁ
どうしよう

涙のせいで

平助が
よく、見えないよ


「ね、新八…最後のお願い、だから…」
「最後なんて言うなっ!言わないで…ッ」


最後なんて言わないで

また、次があるでしょ?
明日があるでしょ?

ずっと
傍にいてくれるでしょ?


「新八…笑って?」


笑って、なんて
言わないで

言わないでよ、平助

最後の願いなんて
聞いてやりたくなんかないのに


「お前は、ヒドいね…」


涙でぐしゃぐしゃだけど
無理やり作ったやつだけど

ねぇ
お前は俺の笑った顔
よく、好きだって言ってくれたよね

こんなへたくそな笑顔でも
嬉しそうに笑ってくれるんだね


「新、八…ッ、」
「っ…も、喋らないで…ッ」


そんな
苦しそうな顔して

無理に話そうとしないで

それじゃまるで
もう話せない、みたいで


平助の手が
俺の方に伸ばされて

暗闇で探るように
俺の頬に触れた


「平助、目が…ッ」
「最後に見えたの、笑顔でよかった」


ダメだよ
平助

こんな、苦しいの
耐えられないよ

笑えないよ
平助が好きって言ってくれるのに

勝手に、涙が溢れるんだ


「ね、怒らないでね…?」


平助の手に
少しだけ力が入って

平助の方に
引き寄せられて

口づけを、される


「しょっぱい、ね?」
「馬鹿…っ」
「好き、だったんだ、ずっと」


知ってたよ
そんなの、気づいてた

でも

俺が幸せになれないからって
言わなかったんだよね、平助?

俺の気持ち
知りもしないでさ


「平助…ッ、」
「ん?」
「いかないで…っ」
「…ごめんね」


もう
わがまま、言わないから

話してとも
触れてほしいとも言わないから

生きててくれるだけで、いいから

俺を
置いていかないで


「許さないからッ…置いてったら、許さない…」
「ごめんね、新八…大好きだよ」


ずっと言ってくれなかった
ずっと言えなかった言葉

どうしてそれを今言うの?


「遅いんだよ…ッ」
「うん」
「もっと、早く言え…!」
「うん。ごめん」
「そしたら、こんな…っ」


こんな想いはしなかった?
ずっと一緒にいられた?

きっと違う

たとえ早く言われても
たとえ恋仲だったとしても

平助は
自分の信じた道を進んでた


「新八…」
「平、助…」


頬、額、鼻、唇

全部
まだこんなに、愛しいのに

こんなに
失くしたくないのに


触れるだけの口づけ

何度も
何度も繰り返す


「幸せ、だなぁ…」
「へ、すけ…っ」


一時も離れたくなくて
温もりを分けてあげたくて

休む間もなく口づけを交わす


なのに
平助の身体は
段々冷たくなってきて

涙が
平助の頬に零れて


恐い

失くしたくない
一緒にいたい

いかないで
俺を置いて、いかないで


平助の目が

少しずつ
開かなくなってきて


「新八…新八、」
「平助ッ…へー、すけ…」
「好、き…」


そう言って
笑って

平助の瞼が
閉じられていく


言わなきゃ
平助を、送るために

答えてあげなきゃ

平助
喜んでくれるもんね?


「俺も、好きだよ…平助。ずっと、好き…」


そう言って

もう何も見えない平助に
もう動かない、平助に

そっと
最後の口づけをして


しょっぱい味がする、って
へたくそな顔で笑ってみせた





はーいシリアス。
管理人泣きながら頑張って書き上げました。
何時間もかかって書き上げました。
辛くて続き書けなくなりそうになりながら(笑)

ってか長いですね。
なんかもう許して下さい。

拍手ありがとうございました!
元気と勇気をありがとうございます。
頑張って更新してきますねw



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