どうしてそんなに執着するの?
何度も何度も、屋敷にいるときも会合中であっても夜には、呼ばれて連れていかれて相手をさせられて。屋敷で仕事をしていたら邪魔をしてくるし、喧嘩を売るような言葉を投げつけてくるし。
そんなに誰かと重ねられることにイラついた?
私が『先生』と付き合っていたこと。それがあなたと似ていたと暴いたときとても不機嫌になっていた。
他人と比べるだなんて失礼なことだし、苛立つ気持ちも理解できなくない。
もし誰かが私に仲良くしてくれていたのが元カノと似ていたからかもしれないと思えば、きっと切ない気持ちになるだろう。
でも、あなたが私にちょっかいをかけてくるのは、あなたと『先生』との共通点を私に探させるため。探して見つけてあなたが『先生』の代わりになるためだと言ったわよね。
そんなのおかしいじゃない。
誰にもそこまで触れさせたことはない。
そんな深い仲になったこともない。
それはあなたも知っていることでしょう。
あんなに熱っぽく名前を呼ばれたことなんて。熱い燃えそうな目で見られたことだって、一度もない。
私にとってあなたは唯一の、たった一人で初めての人。
たくさんの付き合いをしたことのある、あなたと違ってね。
だったら今のこの関係はなんなのかしら?
ただのお遊び?いやがらせ?
部下に手を出すなんて、上司として最低だわ。一度超えてしまった線はもとには戻らないこと、あなたは知っているの?
愛情もなく相手を抱くことにあなたは何も感じないかもしれないけれど、抱かれた方は平静ではいられない。
自分でも耳を塞ぎたくなる甘ったるい声を上げさせられて、熱を求め震える身体を持て余して。そして与えられた熱が自分だけでないと分かっていても溺れたくなる気持ち、あなたに分かるはずがない。
ああそれとも、今までの相手にはなかったそんな初な反応も、あなたにとっては面白い見世物なのかしら。
あなたの退屈を紛らわせること。前に私に命令したものね。
行きつく先も終わり方も、何一つ想像のつかないこの関係。
どう転んでも綺麗に『先生』のときのように終わることはできないでしょう。
始まる前に戻れないのならば。周りにも気づかれないまま、あなたへ抱くこの気持ちがあなたに伝わることのないまま。
ただひっそりと潰えてしまえたなら……。
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