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【グリッドマン ユニバース:レクよも】グリユニ後軸。
  知りたいことって、なに?


「今ならなんでも聞けるって言っただろ」
「……それってあの夜限定だと思ってました」
「ンなわけないだろ。蓬だけは特別。聞きたいことあるなら遠慮するな。……ってか、俺は蓬に疑問もたれたままは
嫌なんだよ」
「……疑問って、くだらないことでもいいんですか?」

 公園の出入口まで蓬を引っ張って行って車止めに腰掛けたレックスが蓬に近い目線で手を取ったまま話を聞く。
 蓬はずっとガウマの誕生日を聞きたかったけれど昔のことや個人的なことは微妙にはぐらかされてきたので答えて
くれないと思っていたから聞くのを躊躇っていた。
「なんでも聞いてやる」と言われたが答えてやるとは言われてないしそういう返し方をされると逆になにも言えなく
なる、レックスは蓬がどう返すのか分かっていて言ってる気がする。

「くだらないかどうかは重要じゃない。蓬にとっては大事なことかもしれないだろ。俺が決めることじゃない」
「……誕生日教えてほしいって言ったら、答えてくれるんですか?」
「五月一日だ」
「あっさりぃ」
「……一年も生きてたこと黙ってたからな。もう隠し事みたいのはしたくねぇ」
「じゃあ、これから聞いたらなんでも答えてくれるんですよね?」
「ぐっ、事と次第による……」
「やっぱり。なんでも聞くけどなんでも答えるとは言ってないって返すつもりなんですね。ガウマさんひどいなぁ」
「ひどくな――ッ」
「うっそ~。ガウマさんみたいに誠実な人いないですよ」
 声を上げようとしたレックスに蓬からキスをして言葉を塞ぐ。直前に周囲に人がいないか確認したので問題ないが、
目の前の蓬に集中していたレックスにとっては十分不意打ちで、なにより蓬からされるのは稀で瞠り固まる。
 さらにはにかんで嬉しいことを言ってくれたのでひゅっと息を呑むがガウマの驚きに蓬は気付いていない。サングラス
のブリッジをちょんと鼻先で押した蓬が微笑い、レックスが息を吐く。
「はぁ。やっぱ俺の命の恩人はかっけぇなぁ」
「……いつまで〝命の恩人〟って言い続けるんですか」
「事実だからな。それとも〝俺の恋人〟って言ったほうがいいのか?」
「そりゃあそうですよ」
 間髪入れずに返された言葉に再び一瞬固まるがやはり蓬は男らしくてカッコイイよな、という顔をして屈託のない
笑顔を咲かせる。内心鼓動を抑えつつ勇気を出して言ったのにレックスは素で格好良いことを言える、そういう部分に
惹かれて憧れているので今更だが度量の違いを見せつけられた気がした。不満はないが悔しい。
 そんな蓬をよそにレックスは楽し気に笑うだけ。それならと話を戻した。

「ガウマさんは俺の誕生日聞かないんですか? ……興味ないですか?」
「ないことはねぇけど……。実は知ってんだよ。蓬の部屋に泊まった時、学生証が机の下に落ちてるのを拾って偶然
見たから」
「そう、ですか……」
「でもな蓬。知っててもその日会えなかっただろ。だから……今年はその日、空けておけよ。夜だけでもいいから」
「朝から、じゃなくて夜だけでも、なんですね」
「そりゃそうだろ。泊まりになるからな」
「うっわぁ……ッ」
「くっくっくっ。よ~も~ぎ~? 顔伏せるなよ」
 誠実な人と言ったのを撤回したくなるが堪えて顔を上げれば楽しそうに笑うレックスがさりげなく取っていた手を
擦り、照れくささの極致の自分とは度量が違うのを痛感する。だが早くも数ヶ月先の予約を取られたのは嬉しい。
 それならいっそのこと誕生日はキス以外のこともたくさんしようと思った。まずは甘えてみること。
 ガウマと過ごす夏以外の季節がどんなものになるのか、今から楽しみで頬がゆるむ。

 今度こそこの手を離さないようにしようと心に決めた瞬間、ツンと鼻の奥が冷たく痛んだ。以前もこんな気持ちに
なったような、違うような、デジャヴュにも似た感覚がしたがあとで考えることにして取り敢えず息を吐いた。
「あっ、そうだ。来月のシフトが出たので一応共有しておきますね」
「おぅ、分かった」
 当たり前のようにシフトを渡してくる蓬は無意識で、しっかり恋人していることにいつ気付くのかと内心でほくそ笑み
ながらまだ手を繋いだ状態でシフトを受け取った。
「じゃあ、そろそろ……。たこ焼き食ってくか」
「はいっ」
 そろそろ蓬を自宅のある世界に送っていくと言おうとしたが一瞬寂しそうな表情になったのを見逃すわけはなく。
 名残り惜しいのはレックスも同じなので小腹が空いたと誤魔化して車止めから立ち上がるも手を掴んだまま街中へ
と目配せをして同じ速度で歩き出した……


 ──終了──
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