指に触れる愛が5題
サモンナイト2 〜ルヴァイド〜
「……もう良い。話にならん。今日の軍議はこれで終いにする」
一向に先に進まない軍議に見切りをつけて、ルヴァイドはそう言い放った。
デグレアからもたらされる指令、伝令兵からの情報、どれを取っても事態が良い方向に進むものはない。
膠着した状態を打破するためには、なんの意味もない情報。
犠牲を多大に被るような、一か八かの戦法は、もう、取りたくはない。
……犠牲は少ない方がいい。
バサリ、と天幕を払い、外に出る。
既に空には星々が輝いていた。
太陽は地平線下へ身を隠したとはいえ、軍議を早々に終えたため、時間はある。
……もちろん、やらねばならないことも山のようにある。
だが。
ルヴァイドの足は、迷うことなく進んだ。
自らの宿舎へと。
「入るぞ」
本来ならば、自分一人の宿舎に入るのに、言葉はいらない。
だが、その言葉をかけたのは、
「ルヴァイド!」
自らの宿舎にいる、少女のため。
天幕を上げ、中へ歩みを進める。
「おかえりー!今日は寝る前に会えた〜!」
迎えてくれたにこやかな笑顔に、ルヴァイドは小さく溜めていた息を吐き出した。
「あぁ。……今日は、早く終わったからな」
「あんまり早くはないけど……でもまぁ、お休みがあることは大事だと思うよ、うん」
一人で頷く少女に、ルヴァイドは小さく笑う。
軍議の時には頑なに存在していた眉間の皺は、すでに姿を消していた。
だが、そんな自身の変化を、ルヴァイドが気づくことはない。
「シルターンの読み物を読んでいたのか?」
ベッドの傍らに置いてある本を見て、ルヴァイドはそう尋ねた。
「うん。軍医さんのところにあったから、貸してもらったんだ。シルターンの星座に関するお話みたい」
「なるほど、星座か。……あぁ、シルターンとは違うだろうが、今宵は星が美しいぞ」
「え、ホントー?……見たいなぁ。見てこようかなぁ」
「ならば、共に行こう」
治りかけてきたとはいえ、体にはまだ痛々しい傷跡を残している少女。
ルヴァイドは当然のように、手を差し出した。
少女はその手に、躊躇いの様子を見せる。
……どうやら、少々恥ずかしがり屋の少女は、エスコートに戸惑っているらしい。
「……えーっと「この手の行き場がないと困るのだが?」
何か言うより早く、己の意見を発すれば……少女は困ったような笑みを、諦めの笑みへと変えた。
「…………はーい」
小さく呟いて、指だけをそっと、手のひらに乗せてくる。
細い指先、自分よりも随分と小さなその指が、触れた。
触れているのは、指だけ。
……たったそれだけで、思いの外心臓が高なった。
今度はルヴァイドが、その指をそっと包む。
そこから伝わる熱に、否応なく募る想いもある。
それでも。
「……では、行こう」
今の状況で、この想いに名付けることなど出来ない。
だから。
せめて、今宵だけは。
「……こちらの星も、美しいものだぞ」
一面に広がる夜空と、指先から伝わるぬくもりだけを、君と共有して。
指だけ、そっと繋がることだけを許して欲しい。
「指だけ、そっと」
サモンナイト2 ルヴァイド
拍手ありがとうございました。
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