「…さま……ユエさまーっ」

 遠く耳を澄ませば、地上から契約した少女の声が聞こえる。
青い髪の少年は、漂わせていた意識をそちらへと集中させた。

「ファイレン、どうしたの?」
「えへへ、ユエさまにお知らせなの!」

 ファイレンと呼ばれた少女は、地上、川のほとりで足を水に浸して笑った。
一方、神界ラの自室で遠見をしていた少年、ユエは、少女に繋がっている感覚から、水の冷たさや木々のざわめきまで感じて微笑んだ。

「今度は何?」

くすくすといつまでも笑っている少女に先を促す。

「えっとね、ちょっと早いけど収穫祭するんだって。今年は作物も魚も沢山だから」

神への感謝を込めて行われる収穫祭。例年は秋に、と大体決まっている。
今年はまだ日も強く、作物はすくすくと成長し続けていて。
突発的に決まったソレを、驚かせる対象の1人であるユエにわざわざ教えた理由は…

「ユエさま、遊びに来るでしょう?」

尋ねる、というよりも確認の意味が強い。
本来、会話だけなら契約した民と神で自由にできるものの、神が地上へと降りることは少ない。
それでも少女はわかっているらしく、無邪気に笑った。

「そりゃ、もちろん!」

当たり前だとでも言わんばかりに、元気な声が響いた。



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「また行くのかい、ユエ?」
「お祭りだもん」

神達の長、ホホギオサの前にちょこんと立ち、ご機嫌に答える。
その様子に咎めることもしなければ、人差し指をユエの額に触れさせ、小さな印を刻む。
神が地上へ降りる際の制約とも言える印。
触れた手は、そのままぽん、と頭を撫でた。

「気をつけて行っておいで」
「はーいっ!」

昔の無気力な青年の姿を思い浮かべ、変わったものだと小さく笑う。
嬉しそうに走っていくその後姿に、ホホギオサは手を振って送り出した。


それは、今ではもう珍しくもない光景で。




<楽園のファンタジオン PC:ユエ・コアフォン>



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