おそろい




ミサカの目の前には、ミサカを映す鏡。

むー……っとミサカはミサカは腕を組んで悩んでみたり」

「なァにヘンな顔してやがる、クソガキ」

いつの間にか隣に並んでいたアクセラレーターを見上げて、ミサカの悩みの種を引っ張ってみる。

「アクセラレーター……、”コレ”なんだけど……」

「アホ毛がどうしたンだよ」

「アホ毛じゃないもんってミサカはミサカはっ……!」

「あァ、ハイ、ハイ。分かったから、騒ぐンじゃねェよ」

「うー……」

「で?」

ぶんぶんと手を振ると、飽きれたように、あっさり交わされちゃう。

それでも、ちゃんと話を聞いてくれるのは、この人の優しさ。

だから、 ミサカはこのひとが、だいすきなの。

だから、だから、ミサカは、このひとの、お嫁さんになったんだよ。

ちょっとだけ恥ずかしいけれど、ちらりと見上げて、ゆっくりと口を開いてみる。

「…、あの、ね。も、もし、ミサカに、あの、あか、ちゃんがね、出来たら、」

すごく、未来のことを考えちゃっていると思うけれど、ミサカは考えられずにはいられないの。

紅い瞳が、飽きれるか、もしかしたら怒られるかな。

でも、ゆっくりと目蓋を閉じただけで、しかもミサカの言葉を促すように顎を動かす。

「…………たら、」

「”コレ”も遺伝しちゃうのかなぁって、ミサカはミサカは心配してみたり、なの」

「……ふゥ」

やっぱり溜息!

「あ、あからさまな溜息を吐くなんて!ミサカはミサカはあなたの冷たさになれたはずなのに悲しくなったり!」

「……ばァか」

いつの間にか大きくなったこのひとの大きなてのひらが、ミサカのぴょこんと立ち上がった髪の毛ごと頭を小さく叩く。

「ううう!ぽふぽふしないでよおってミサカはミサカはあなたの大きな手のひらを必死にどけようとしたりー!!」

腕を伸ばして、このひとの手を止めようとしたら、ぴたりと頭を包み込むようにして、動きが止まる。

「このアホ毛がねェとてめェはチビだからチョロチョロしやがるとわからねェ」





「……てめェよりチビならそれはもっと必要だろォが」




このひとの言葉が突然早口になって、でも、それは、とても大切な言葉で、ミサカは慌てて記憶を呼び戻す。

「え……、ってミサカはミサカはあなたが言った言葉をもう一度頭の中で繰り返してみる!」

「あーうるせェ、クソガキ。バカなことばっかちィせェノウミソで考えてんじゃねェよ」

逃げるようにどこかに行ってしまおうとするのは、きっと、このひとが照れているから。

「むふーって、ミサカはミサカは幸せな笑みを浮かべてみたりー!!」


(おわり)



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