☆悪い男(翔潤)②☆



そもそも、見合いを断る口実を考えるのがめんどくさくなったのが事の発端だった。

仕事だとか体調が悪いとか言っても、叔母は無理やり予定をねじ込んでくるのだ。

結局何度か相手と会って断ることになるのだが・・・

それを大学の同級生に愚痴ったところ、『そういうめんどくさいの、引き受けてくれるところがあるよ』と教えてもらったのが、潤のいる会社だった。

表向きはモデル派遣会社だけど、頼めば引っ越しの手伝いからアルバイトの代行、迷子の犬探しなど何でもやってくれるという話だった。

そこで依頼したのは『恋人の振りをしてくれる女性』。

モデルならきれいな女性がいるだろうし見合いを断る口実にちょうどいいと思ったのだ。

だけど、現れたのは『松本潤』。

確かに美人だけれど、どう見ても男だ。

『うちの相葉くん、よくそういうミスするんだよね』

悪びれもせずそう言った潤は、すぐに代わりのモデルを呼ぼうとしてくれたけれど―――

『きみでいいよ』

そう言ったのは俺だった。

そして、作戦は大成功だった。

モデル並みに綺麗な男の恋人。

そんな潤を見てほとんどの見合い相手は自分から断ってくれた。

そして、男に負けたとは言いたくないのか、自分にその気がなかっただけ、と言って俺を責めることはほとんどなかったのだ。

俺としては恋人が男となれば叔母も諦めるだろうと思ったのだが、その考えは甘かったようだった。

だけど―――

「しょおくんがお見合いするたびに依頼してくれるから、俺は助かるけどね」

そう言って色っぽく俺を流し見る潤。

ベッドの上の潤の、シーツからのぞく白い艶やかな肌が眩しかった。

「どっちが悪い男だよ・・・・俺に会えるから、とは言ってくれねえの?」

潤の柔らかな髪に指を差し入れ、その赤い唇にキスをする。

「ん・・・・・・だって俺は、しょおくんからの依頼がなかったらここにいられないでしょ?」

そう。

俺と潤は、あくまでも客とモデルの関係だ。

俺自身は、潤と本当の恋人になってもいいと思っていたけれど―――

「―――そろそろ行かなきゃ」

そう言うと、潤はベッドから出て落ちていた服を拾った。

「もう?仕事か?」

「ん」

「どんな仕事?」

「絵のモデルだよ。・・・・ふふ」

「何?」

「その依頼もさ、本当は女の子のモデルをって話だったのに相葉くんがミスったの」

「そうなの?でもお前がモデルやってんの?」

「うん。俺を描きたいって言ってくれて。結果、俺の仕事になったからラッキーだった」

「ふーん・・・・・」

「じゃ、またね、しょおくん」

そう言って潤はホテルの部屋を出て行った。

初めて会ったその日に、俺は潤をホテルに誘った。

それから、会うたびに潤を抱いてる。

だけど、潤は時間がくれば俺の前からいなくなってしまう。

もしかしたら。

潤は、他の奴にも抱かれてるのかもしれない。

その、絵のモデルの依頼者だって・・・・

そう思うと切なくて。

『恋人になってほしい』なんて

とても言い出せなかった・・・・。



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