☆猫と独占欲☆魅せられてより(智潤)☆


「あれ、相葉ちゃんいないの?」

とある捜査で近くまで来たので、相葉ちゃんの経営する喫茶店『ARASHI』にやってきたのだけれど、相葉ちゃんの姿は見えなかった。

「さっき、潤さんから電話があって」

バイトの女の子がそう言った。

「え・・・潤から?」

「はい。それで、ちょっと出てくるからって。すぐ戻るとは言ってましたけど」

店はちょうどアイドルタイムで客は少なく、ここで長くバイトしている女の子が一人でも回せる程度だった。

「いつものコーヒーですか?」

「あ・・・・ごめん、また後で来るわ」

俺はそう言うと、不思議そうに首を傾げる女の子を後に店を出た。

心配しすぎだとは思うけれど。

潤からの電話というのが気になった。

このビルの2階で探偵業を営む翔くんの元で働いている潤。

見ただけでその人の過去に見たものがすべて見えてしまうという能力を持っている潤はなぜかトラブルに巻き込まれることが多い。

そしてそんな潤は俺の同居人であり、恋人でもあった・・・・。




翔くんに電話すると、潤は今日は迷子猫探しに出ているということだった。

それで合点がいく。

潤は、動物が好きだけれどなぜか動物に避けられる傾向にあった。

嫌われる、というよりは怯えられるという感じ。

猫に引っかかれた、犬にほえられた、と言ってはよく落ち込んでいる。

逆に、相葉ちゃんは動物の扱いがうまい。

大概の犬猫に懐かれる。

たぶん、その猫探しに相葉ちゃんが一役買っているのだろうことは容易に想像できた。



翔くんにその依頼人の住所を聞き、その辺りに行ってみると―――

その家から目と鼻の先にある公園の植え込みの前に、見覚えのある2つの頭が見えた。


「いる?」

「いる。けど、怯えてるみたい。・・・・・おいで、怖くないから・・・・」

相葉ちゃんが猫用の餌らしきものを手に植え込みの間に手を伸ばす。

潤はその相葉ちゃんにくっつくようにして見守っていた。

―――だから、くっつきすぎなんだって。

声を掛けたいのを、俺はぐっとこらえる。

潤の仕事の邪魔をするのは本意ではない。

「おいで・・・・ほら、いい子だね・・・・・潤ちゃん、キャリーを」

「ん・・・・」

潤が、持っていた猫用のキャリーを相葉ちゃんに渡す。

相葉ちゃんはエサに引き寄せられ出てきた子猫をそっと抱き上げ、キャリーに入れた。

2人がほっと息をつく。

「よし、完了!」

「ありがと、相葉ちゃん!いつも本当に助かるよ!」

「いえいえ、潤ちゃんのためならこのくらい。ね、この猫ちゃん返しに行ったらお店に来るでしょ?今日はおいしいケーキがあるんだ」

「ホント?嬉し・・・・って、智?」

潤が、ようやく2人の後ろに立っていた俺に気付いた。

「お疲れ」

「大ちゃん!びっくりしたあ、何してんの、ここで」

「相葉ちゃんの店に行ったら、潤からの電話で出てったって言ってたから、また何かトラブルに巻き込まれたのかと思って」

「この子が、植え込みの狭い隙間に入ったまま出てこなくって。俺が呼んでも怯えるばっかりだから、相葉ちゃんに来てもらったの。うまくいってよかった」

潤が嬉しそうに相葉ちゃんを見て笑う。

相葉ちゃんもそんな潤を見つめ目尻を下げる。

相葉ちゃんはいい奴だ。

俺も友達として信頼してる。

けど―――

「あとでお店に行くね」

「待ってるよ!じゃあね、大ちゃん」

そう言って走り去る相葉ちゃん。

手を振る潤。

そんな潤を見つめて・・・・

その手を握った。

「ん?智、どうかした?あ、なんかお仕事の途中?」

「いや・・・・」

潤は、自分の能力を俺には絶対使わない。

「休憩に、店に寄っただけ。その猫、依頼者のところに持って行くんだろ?」

「うん」

「じゃ、俺も店で待ってるよ」

「ホント?わかった!じゃ、行ってくるね!」

「その前に」

「え?」

俺は、素早く周りを見渡し誰もいないことを確かめてから―――

潤の唇に、ちゅっとキスをした。

途端に赤くなる潤。

「・・・・今日、うちに帰ったらお仕置き」

「え?なん・・・・」

「相葉ちゃんに、くっつきすぎだから」

俺の言葉に、潤が困ったように口を尖らせた。

自分でも独占欲が強いとわかってるけど。

潤に関しては仕方ない。

と開き直ってる。

それでも。

「―――じゃ、あとでね、智」

嬉しそうに笑って潤がそう言うから。

「ん、行っといで」

俺も笑って潤を見送った。

俺たちの日常は、これが正解。



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