(八戒) ―――『wedding reception』――― 「あー!もう!鬱陶しい!!」 「あ」 大学時代の友人の結婚披露宴から帰る道すがら。 彼女は、見事に束ね挙げられた髪を、無理矢理に解いた。 がしかし、スプレーでガチガチに固められたそれは、いつものようにさらりとは戻らず。 彼女の髪は、結局ポニーテールのように、頭上でまとまったままだった。 「うがー! 結婚式とか見るのすっごい好きなんだけど、こればっかりは嫌! なんで美容師さんってこう、スプレーしたがるかな!? ピンとっても、全っっ然直んない!!」 「仕方がありませんよ、披露宴は長時間ですし。 きちんと洗わないと、そういうのは落ちませんから。 でも……」 「でも?」 「残念ですねぇ。せっかく似合っていたのに」 綺麗にセットされた直後を見ていた人間としては、 一応まとまっているとはいえ、今の彼女の髪は無残の一言に尽きる。 せめて、家に帰ってから直せば良かったのに。 公共機関も乗り終わり、僕の他に衆目がなくなってからの彼女の行動は、止める間もないほど迅速だった。 殊更、残念がって見せると、彼女は可愛い眉間に皺を寄せて、その言葉に反発を見せた。 「八戒は分かってない!あれ、髪ひっつめられてて、滅茶苦茶つらいんだからね」 「確かに、それはそうですが……」 「会場でもう嫌ってほど見たでしょ? あー、早くお風呂入りたーい髪洗いたーい」 そう言いながら唇を尖らせる彼女に、思わず笑みが零れる。 若干、酒が入ってるせいで上気した頬をしている彼女を見ていると、 何故だろう、少し悪戯心が沸いてきた。 「分かりました。なら、僕が丁寧に洗ってあげますね」 「……は?」 「酔っ払った貴女を一人で入らせたら心配ですから」 「いやいやいや、なにその満面の笑み!?」 「気のせいですよ?」 「そんなワケないでしょ!え、ちょっ、一緒に入る気じゃないでしょうね、まさか!」 「良いじゃないですか。僕らもう、夫婦なんですから」 「……私、恥じらいを失くしたら、女として終わってると思うのね?」 「大丈夫です。貴女がとても女性らしいということは、僕がちゃんと分かってますから」 「意味が分からない……っ!」 ―――そんな君を愛してる。――― ―――作者のつぶやき♪――― あれ、プロポーズ話だったはずなのに、ただのギャグになってる。 拍手して下さって本当にありがとうございます。 メッセージのお返事は、出来れば日記辺りでしますので、覗いてみて下さいね。 |
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