THANK YOU FOR CLAP!!

The words of thanks



外は雨。手には鞄だけ。目の前には傘を持ったテニス部員が一人。
まずい。これは気まずい。ここで横に立って空を見上げてでもしたものなら、それは「傘に入れてください」なんて言っているのと一緒。



ならどうすればいい。
自問自答してもいまいち良い答えは返ってこない。
玄関の少し手前で、微動だにしない私はかなり怪しい人物であった事は間違いないだろう。
雨が止むまで待つ気もないし、かと言って彼は動こうとしない。
ならば選択肢はたった一つ。



気付かなかったふりをして、そのまま帰る。



決意した私は、床に放り投げたローファーに自らの足を入れて、ぎゅっと鞄を握り締めた。
コツンコツンと一歩ずつ歩いていく。
大切なのはいかに自然に、気付かれずに歩くか、だ。
出来るだけ、彼から離れた方向へと進んでいく。
一番彼と近い位置を通り過ぎ、心の中でガッツポーズを決めた瞬間、私の作戦は失敗へと転がっていった。



そう、私の肩に手を乗せて私の静止を促したのは紛れもなく…




宍戸だった。




「おいっ濡れるぞ。」



そう、濡れるよ。濡れるんだけどさぁ、宍戸。
やっぱりかと思い、後ろを振り向くと宍戸はいたって真面目な表情をしていた。



「うん、濡れるねぇ。」



「濡れるねぇ、じゃねぇだろう。」



苦笑いしながらぎこちない返事を返すと、宍戸はまたまた真面目な答えを返してくれる。
彼はさっきから何も間違ってはいない。間違ってはいないんだけどさ、。



「でも、傘持ってないし。」



「どうせ同じ方向だろ。」



「…!い、入れてくれるの?」



宍戸が平然と言い放つ。驚いて、情けないことにどもってしまった。
当の宍戸は平然としていると言うのに。あの宍戸が!



どもっている間に、宍戸は雨の中へと少し歩みを進め、傘を開いていた。



「まさか見捨てて帰れねぇだろうが。」



私は犬ですか…なんて思ったけど、こんなチャンス逃がす訳にはいかない。
だって大好きな人が傘をひらいて待っていてくれてるんだから。



「ありがとう。」



お礼を言い、遠慮がちに傘に入る。
やばい、ヤバイ。絶対に顔が真っ赤だ。
少し遅れて、「おぉ。」とお礼への小さい返事が返ってきた。



ふと、隣をまた遠慮がちに見ると、前を真っ直ぐ見て歩く私の好きな人。
口数の少ない、クールな宍戸。
…クールな宍戸?宍戸がクール?ねぇ、もしかして、もしかしなくても、緊張してる?



「何見てんだよ。」



いつのまにか凝視していた私に、大きく傾いた傘の下、肩をぬらしながら宍戸はボソッとつぶやいた。





私の好きな人は、照れ屋さんでした。
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(跡部と忍足ver.はmainにあります。)



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