パチパチありがとうございましたっ!
現在お礼文は鴆昼のお話が一つです。
まきょ7巻のドラマCDネタを含んでます。






[ シャンプーのおはなし ]



 シャコシャコシャコシャコ

「……リクオよぅ」
「なに? 鴆くん」

 奴良組本家の大浴場。
 手拭い一枚腰に巻いた出で立ちの昼の姿の三代目総大将が、その義兄弟である薬師一派の頭領を木製の風呂椅子に座らせ洗髪をしているという、何とも珍しい図がそこにはあった。

 リクオに呼ばれて顔を出しに来た鴆だったが、屋敷に着いて早々、電話を寄越した本人に会うや否や鴆くんっお風呂入ろう!と腕を掴まれ訳の分からぬままあれよあれよと、真っ昼間から広い浴場へと連れ込まれる羽目になり、この状況に至る訳である。

 シャコシャコシャコシャコ

 リクオはその小振りな手で、指先を使いしっかりと鴆の頭皮をマッサージしながら、松葉色の短い髪を洗っている。

「どうしてこんな思い立ったように…洗髪なんて」
「前に黒が使ってるシャンプー教えてもらってね、それで夜のボクの髪の毛少しは落ち着いてくれないかなって試したんだけど、」
「あんま変わってなくねぇか?」
「うん…そうなんだ…じゃなくって、ボリュームは変わらなかったんだけど手触りはよくなったんだよ。前よりさらさらになって。しかもそのシャンプーね、香りもとても好くてよくリラックスできるんだ」
「ほう」
「だからさ、日頃の感謝を込めて、鴆くんにご奉仕しようと思って」
「それで」
「うん、シャンプー。気持ちよくない? 毛艶もよくなると思うよ?」

 シャコシャコシャコシャコ

 随分とご機嫌な様子で、リクオは鴆の髪を洗い続けている。何処となくその手触りを愉しんでいるように思え、何故奉仕の方向が洗髪に向かったのかに一抹の残念さを覚える鴆だっだが、リクオが愉しそうであるからまぁいいかとそっと目を閉じ、己の頭をしゃくしゃくと撫でる感触に、口許へ小さな笑みを浮かばせた。

「おかゆいところはございませんかー」
「特にねぇな」
「えーノリ悪いなぁ」

 むうと膨れる愛しい子に苦笑しつつ、労りの気持ちをこうして直に伝えてもらったことに、胸の奥がほっこりと暖かくなるのを感じた。
 しかし恋人を目の前に、しかも浴場に居て互いに裸なこの状況。やはりこれだけでは物足りないと思ってしまうのは仕方のないことであると自分を正当化させた鴆は、少し、調子に乗ったことによりリクオの制裁をその身に受けることになる。

「それよりリクオ、俺はこの床屋の真似事より医者の真似事の方が楽しいと思うんいででででででっ!!おい爪立てんなやめろ!いてぇって何すんだリクオ!!!」
「え? なに?」
「あ、や…何でもナイ、デス」

 今は人間の姿であるのに、明らかに感じた畏の塊に、鴆は大人しく前を向き続けるしかなかった。
 夜の姿のときの方が余程素直なんじゃないかと肩を落とした鴆のその後ろ、実はうっすらと顔を紅く染め必死に照れ隠しをしていたリクオに鴆が気付くのは、もう少しだけ、先のこと。






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