「何を見ているんですか?」 にこりと微笑み問いかけてくるのは、アレン。 私はくるりと身体を反転させ、アレンを見つめると。 にこり。 そんな音が似合いそうな笑顔を浮かべた。 「空を、見ていたの」 そう言いながら、私は青く続く空を見上げた。 雲ひとつない──なんて言葉の似合わない、白いソレが点々と広がる青空だった。 「空を、ですか?」 「うん」 静かに問いかけるアレンに、私は静かに頷き返した。 さらりと。 風が流れるたびに、私の髪もそれにつられるように動きだす。 「空って気持ち良さそうだと思わない?」 ふいに、私はアレンに問いかけた。 その問いに彼はただ首を傾げる。 そんな姿を見てしまえば、彼はそう言った事をあまり考えていないという事が窺える。 「鳥がスピードを出して飛んでる 雲が風に乗るように流れてる」 そう言われ、アレンは空を見上げる。 そうすれば、その瞳には私が言った通りの景色が映る。 「私は、そういう事が出来ないから だから、気持ち良さそうだなって………羨ましいなって」 「きっと、飛べますよ」 まさか、そんな言葉が返ってくるなんて想像もしていなかった私はキョトンとした表情を浮かべていたらしい。 アレンがくすくすと笑っている。 「わ、笑わなくってもっっ」 「いえ、すみません なんだか、可愛いなって……」 可愛い、なんて言葉。 そんな言葉はただ私の頬を赤く染めるだけだ。 「……飛べたら、いいよね」 「………そうですね」 ふわりと微笑む私に釣られるように、アレンも微笑んだ。 彼の微笑みは私とは違う。 でも、とても美しく見えるソレ。 知っていた。 私も。 彼も。 誰もが。 「…………翼、か」 鳥と同じ翼。 たとえそれを持っていたとしても。 「…………可愛いでしょうね」 「もうっ 変な想像したでしょっ」 飛べない事を、彼らは知っている。 だから。 だから、笑う。 だから、言う。 翼を持つ私を可愛いと。 だから、笑う。 だから、言う。 はぐらかす様に、言葉を返す。 翼があっても飛べはしない |
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