『たぶん、これは』 ***BLEACH***(京楽春水×茶渡泰虎)
あの、夏休みの騒動の後。現世で俺の目の前に京楽さんが姿を現したのは、新学期が始まって暫く経った頃だった。
「あの時呑めなかったからさ、一緒に呑もうと思って」
最初は酒を持って来ていたのだが、俺が未成年だからと改めて断ると、「ありゃ、そうだったねぇ…」と呟いて、ヘラリと笑った。
「参ったね、どうも……そうなると、ここに来る口実が無くなっちゃうじゃない」
残念そうに口を尖らすのが可笑しくて、そして何よりも、俺に逢いに来てくれたのが嬉しかったので、遠慮がちに言った。
「それなら、たまには俺の部屋にでも顔を見せに来てください。大したもてなしは出来ないけれど……」
言ってしまってから、ちょっと図々しかっただろうか、と心配になった。 なにしろ相手は、尸魂界護廷十三隊の隊長だ。あんな事があった後だし、きっと凄く忙しいに違いない。
「え、いいのかい?」
それなのに京楽さんは、嬉しそうに頬を緩めると「そいじゃ、お邪魔するよ」と言って、微笑んだ。
それから。
週に一度、京楽さんは俺の部屋に来て、俺が淹れたお茶を飲んで、他愛も無い事を話して帰る。
何度か、それが続いて。
「今日はね、話があって来たんだ」
いつものように、京楽さんから肩にある女物の単と白い羽織を預かってハンガーに掛け、ヤカンでお湯を沸かしている時だった。
常になく真剣な声が聞こえて、振り返って京楽さんを見た。
表情はいつもと変わらなかったが、優しい瞳が俺をじっと見つめて言った。
「茶渡くん……、何だかボク、キミの事が本気で好きみたいだ」
一瞬。 何を言われたのか理解できなかった。
『茶渡くん……、何だかボク、キミの事が本気で好きみたいだ』
スキ?
誰が、誰を好きだって?
京楽さんが、俺を……好き?
むさくるしい風貌の京楽さんが……こんな逞しい、男臭い俺を?!
だけど、俺は。
京楽さんに好きだと言われて、身体中が痺れる位の幸せを感じていて、ひどく混乱していた。
俺は男で、相手も男。冷静に考えると普通ではないんだろうが、そんな事とは関係なく嬉しいと感じていて、そんな自分に戸惑う。
その言葉に、のぼせ上がってしまって。頭の中がふわふわしていて、足が地に着いている気がしない。
そんな自分の状態に戸惑いながらも、素直な気持ちを口にしていた。
「俺も………貴方のことが、たぶん……好き、なんだと思う」
こんな気持ちは初めてで、本当のところはよく分からないままだけれど。
貴方に、好きだと言われて嬉しくて、幸せだと感じて。
だからこれは、そういう事なのだと思います、と告げた。
京楽さんは「ありがとう」と呟くと、蕩けるような顔で笑った。
………たぶん、これは。
俺の初恋というものなんじゃないかと思う。