(瀬方×砂木沼)





「砂木沼さん」

名前を呼ぶが返事はない。
土砂降りの雨が降っているというのに部屋に戻らず、グラウンドで立ち尽くす彼の横でまた、瀬方も立ち尽くしていた。

「風邪を引きますよ。砂木沼さん」

返事はない。
イナズマジャパン戦で負けて以来、弱味を見せなかった彼が、今こうして弱味を晒し続けている。
雨だからなのだろうか。

「砂木沼さん…」

彼は決して弱さを見せようとはしなかった。
無理を承知で結成したチームを率いるキャプテンの重さのせいだろうか。
彼はいつだって強くあろうとした。
今も、昔も、そしてこれからもきっと。

「…わかりました」

彼は決して泣こうとしなかった。人前では、絶対に。
だからこそ、瀬方は砂木沼にこれ以上ここにいてほしくなかった。
雨に濡れて、風邪を引くかもしれない状況にならないと弱味を見せてくれない彼に、もどかしさを感じた。
泣いてくれれば良いのに。俺はそれを全部受け止める覚悟くらいあるのに。
だがそれは瀬方のエゴにすぎない。
覚悟はあっても受け止めきれるかどうかはわからないのだ。
だから、瀬方は、強く出る事を許されなかった。

「俺は、ずっとここにいますから」

ただ、ただ、隣で砂木沼を見守る。
そっと握った手は、驚くほど冷たかったが自分の手を握り返してくれた。
その事実だけに安堵しながら、瀬方は彼のそばで、ただただ曇天に祈ることしかできなかった。
せめて、彼が辛い気持ちを全部押し出すまでは、止んでくれるなと。








止まない雨があればいい




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