(一之瀬×土門)




ベンチでうなだれる一之瀬は、酷く絶望したような、だけれどもすっきりしたような。そんな曖昧な顔をしていた。
試合の途中でベンチへと戻る羽目になった彼の心境は計り知れない物だろう。
最後のサッカー、最後の試合、最後のフィールド。
そうなるかもしれないその場所から、途中で抜け出す事になった、その心境は。

「なあ、土門」
「な、何だ?一之瀬」
「俺のサッカーは、もう終わったのかな」

終わった。
いつでも明るく輝いていた彼がしぼんで見えた。
違う。こんなの、自分が今まで追いかけていたフィールドの魔術師じゃあない。

「馬鹿言うなよ」
「うん」
「終わったとか、言うんじゃねぇよ」
「うん。ごめん」
「まだ、お前、サッカー好きなんだろ」
「うん」
「じゃあ!…」
「うん。ごめん」

ごめん。土門。
そう言って、彼があんまりにも寂しそうに、不安げに笑うから。

「ばっかやろ…」
「ごめん。土門を困らせたかった訳じゃないんだ」

謝り続ける彼に、言葉が出ない。ああ。畜生。情けない。
一発ぶん殴ってやりたかったけど、そんな手荒な事、できるわけもなくて。
ただただ、馬鹿野郎と毒づけば、酷く落ち着いた声でごめんと謝って来る。
ひょっとしたら彼は、後ろ向きな事を言う自分を、しかってほしいだけなのかもしれない。

「俺、またサッカーやれてるといいな」
「馬鹿野郎」

「お前はまだ、サッカーやるんだよ」

今までもこれからも、同じボールを蹴っていきたい気持ちは同じなんだ。
だから、後ろ向きな彼を肘で小突いてやると、間抜けな笑顔が返って来た。
ああ、やっぱり、サッカーやりたいんじゃないか。




過去にはならないよ




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