(源田×鬼道)



「源田」

世界から帰って来たあいつは、世界一という座を一緒に持って帰った。
誇らしげにしていていいはずなのに、鬼道はなぜか、浮かない表情をしている。
原因はなんとなく、掴めていた。

「俺の事は、気にするなよ」
「俺はまた、お前を置いていった」
「ああ。そうかもしれないが、俺は何も、気にしてない」
「源田…」

世宇子に破れた後、雷門に転校して彼は日本一になった。
その後の源田の辿った道を思い出して、鬼道は素直に喜べなくなっているのだろう。
だが、今は違うのだ。
正々堂々と、ネオジャパンとして挑んで負けた。それで、もう自分が通用しない事は分かりきっている。
余計なひがみはしない。そう決めて、彼を出迎えたつもりだ。
それでも、帝国にいたときと同じ、赤いマントを羽織る彼が、遠い存在に見えるのは、どうしてだろう。

「お前は、凄いな」
「…源田…」
「世界一、おめでとう。鬼道」
「源田…!」

明るく笑ってやると、鬼道はたまらず俯いた。
ああ。違う。そういう顔をさせたい訳じゃないんだ。
寂しいとは思う。自分の実力のなさが悔しいとも、思う。
だが、今は純粋に自分の誇れるキャプテンだった人が、頂点に立った事が、嬉しいのだ。
嬉しい。そう、嬉しいんだ。

「源田」
「何だ」
「泣くな。素直に喜べないだろうが」






泣くな、笑え




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