其は紡がれし魂の唄~外伝~ 舞台裏では in 原作前 その5.そんなあいつは変な奴 「「あ」」 思わずと言った感じで出てしまった声が重なった。 目の前にはつい先日喧嘩したばっかりの子の兄を名乗った人。 やっぱり銀色の髪は日本人だらけの学校の中では目立つ。 偶々廊下で会っただけなんだからそのまますれ違ってしまえばよかったのに、ついつい珍しい色に気が取られたら目が合ってしまった。 「……って言うか、ほんとにここの生徒だったんだ」 「いきなり失敬だな、アリサ嬢。そんなに俺は老けて見えるか?」 別にそう言うわけじゃ……あるか。 私もそうだけど欧米系の顔立ちは日系の顔立ちよりも大人びて見えやすい。 悪いけど小学3年生、9歳にはとても見えなかった。 多分、この人のかもし出す雰囲気もあるんだろうけど。 「いえ、ごめん……なさい。アラン、さんであってましたっけ?」 「あってるが……話しにくいなら普段通り話してくれて構わないぞ。 なんとなくだがアリサ嬢はタメ口の方が似合ってる気がする」 「どう言う事よっ!?」 「いや、そう言う所が?」 頼むから首を傾げながら言わないでほしい。 思わず納得しかけちゃったじゃないの。 まあいい。本人がいいと言うなら遠慮なく喋ってやろうじゃない。 「と言うか、さ」 「ん?」 「アンタの妹、マジでしつこいんだけど」 今は授業の合間の休み時間。 本当なら移動教室もないし、廊下に出てくる必要もない。 それでも私が外に出てきたのは、偏にこいつの妹、高町なのはがしつこいからだ。 あれから事あるごとに話しかけてくる。 はっきり言ってあの事件以降、私はクラス内で浮きがちだ。 だからより、あの子が話しかけてくるのが浮き彫りになる。 「普通お兄さんなら止めない? 私みたいな問題児に話しかけるの」 「んー、どうかな。アリサ嬢が本当に問題児だったらもしかすると止めたかもしれないけど、そこまで口を出すのはどうかと思うし」 一旦言葉を止めて。 私を見てからアイツはふと目元を緩めた。 こうして見ると少し親しみのある顔立ちで、もしかしたら日本人の血が流れているのかもしれない。 「そうやって自己認識してるアリサ嬢は問題児とは言えないだろ?」 思考が、止まった気がした。 だってそうじゃない。 普通クラスメイトをからかい続けた結果泣かせてしまうような子は問題児だと断定する。 なのに彼は私を問題児とは言えないと断言したのだ。 困惑する私を前に彼はニカリと笑い、 「な? 問題児はここで俺の言葉に戸惑ったりしないって」 いや、普通今の言葉には戸惑うでしょ。 そんな私の内心を無視して彼は、アランさんはくしゃりと私の頭を撫でる。 セットが崩れる、そんな文句も今は喉がつっかえたように出てこなかった。 「ま、うちのなのはがしつこいのはあの時宣言しておいたから今更だろ? せいぜい頑張ってくれ、アリサ嬢。しつこすぎたら俺も止めるから」 そう言って右手が私の頭から離れていく。 少しだけ、本当に少しだけ寂しさを覚えたのはきっと気のせいじゃない。 だって、頭を撫でられるのなんて本当に久しぶりだったから。 パパもママも、最近は仕事が忙しくて私とゆっくり話している暇もないんだもの。 「俺の見立てじゃ割といいトリオだと思うぞ、君ら。 兄貴の贔屓目を抜いたとしてもな」 それじゃあなと、ひらひら手を振りながらアランさんは去っていった。 教科書とかノートを持ってたから多分移動教室だったんだと思う。 彼は、高町なのはと仲良くなってくれとかそう言うありきたりな事を一言も言わなかった。 多分心情的にはその方がいいと言いたいんだろうけど、それでも彼女と私の意思に任せると、そう言われたような気さえする。 アラン・F・高町、か…… なんにせよ私の感想は1つしかなかった。 「変な奴……」 ----- 拍手ありがとうございます! 使い魔ネタが拍手に適さないと言うご指摘を受けたので、通常の舞台裏をアップ。 さっくり書いたのであっさり短くなっております。 もう少しちょこちょこ書きたいなあと思いつつも、それをやるくらいなら魂の唄を続けろと言う心の声も聞こえまして。 拍手ネタは現在ネタでしかない状態で放置されております。 他のネタが文章化されるのはいつになることやら…… 内海燈夜(110103) |
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