珍しく定時に上がれそうだったので、どこかで食事をして帰ろうかと誘ったのだが。

「あ、ごめんね!今日はちょっと先約があって」

とのことで。
まあそれならそれで仕方がない。何か買って帰るか…と思い立ち上がると、彼女から予期せぬ一言が飛び出してきた。

「ずっと断ってるから、さすがにこれ以上断ったら申し訳ないなと思って」

…ん?
何やら引っ掛かりを感じて恐る恐る彼女の顔を覗き込む。

「まさかとは思うが、先約って…男か?」
「うん、男性だけど」
「…デートか」
「いやいや、ごはん食べに行くだけ」

出た、彼女のごはん理論。
二人で遊びに行くのは「デート」だが、二人で食事をするのは「デート」ではなく「ごはん」らしい。
一体何がどうなってその解釈に落ち着いたのか甚だ謎だが、彼女の中ではあくまでそういう認識らしい。
だが誘った側は1000%、いや10000%「デート」だと思って誘っているはずで。

「ここのところずっと誘ってくれてたんだけど、ずっとお断りしてたからちょっと申し訳なくて」
「どこのどいつだ」
「たまに食堂で一緒になる人なんだけどね、あ、ハボックの隊に所属してるって言ってたなぁ」
「あいつ…部下の管理不行き届きで減給だ」
「なんで?!」

今のは完全に八つ当たりだが。

「でもなんか最近多いんだよね、ごはんのお誘い」
「は?聞いてないぞ」
「別にロイに言うほどの事でもないでしょ」
「どこのどいつらだ」
「いや、いろんな人が…でも彼女と別れたばっかりって言ってる人多いから、話聞いて欲しいのかなーと思うけど」

案の定、完全に狙われてるわけで。
あれか。クリスマスが近いからか。そうか。

「人の彼女に手を出すとはいい度胸だな。消すか、全員」
「怖いこと言わないでよ!あと誰が彼女よ」
「じゃあ上司部下という関係でいくと、今日は急遽上司と会食することになったということでキャンセルしろ」
「横暴すぎる!」

クリスマスまでに何が何でも彼女が欲しいと思っている男は多いわけで。
無理矢理手籠めにされるなんてことは彼女に限ってないだろうが、まあ気分はよろしくない。

「あ、約束の時間になっちゃうから行ってくるねー」
「まだ話は終わってない!」
「帰ったら聞くから、…っと!」

彼女と入れ替わるようなタイミングで入ってきたのはハボックだった。

「あ、ハボック!逃げたほうがいいと思う!」
「え?なんすかそれ」
「ハボックー!!貴様ー!!」
「えっ怖!なんすか大佐!ちょっと?!」
「じゃ、あとよろしく!いってきまーす!」
「あー中佐!ストップ!中佐に伝言っす!」
「え?」
「『ご迷惑だったかと思うので、今日の食事はもし機会があったらまた』って伝えてくれって」
「え?」
「ほう?」

こきこきと指を鳴らしてハボックの首を絞める準備をしていたが、一旦思いとどまった。
彼女もキョトンとしている。

「え、どゆこと?」
「いやー…余計なこと言った感じだったら申し訳ないんすけど…」

ハボックの部下は前から彼女のことが気になっていたらしく。
クリスマスも近いし、今日食事の後に思い切って告白するつもりだったようで。

「なので、中佐は彼氏いるから諦めろって言っちゃいました」
「え!」
「しかもかなり嫉妬深い彼氏がいるぞと」
「え?!誰?!」
「下手したら大炎上するぞと。比喩ではなく」
「どゆこと?!」

言いつつちらりとこちらに目線をくれるハボック。

「なので今日は予定があいたと思うので、俺と食事にでも行きますか、中佐!」
「いいよー」
「燃やすぞ」
「冗談っすよ…」
「え、冗談なの?」

翻弄されてきょろきょろしている彼女に、帰るぞと声をかけてコートを羽織る。

「じゃ、会食だな」
「会食かぁ…あ、ハボックも一緒に行く?」
「…遠慮しときます。あと大佐、顔怖いっす」
「じゃあまた今度ね、ハボック!」
「行くぞ」
「はーい」

ハボックには今度なんか奢ってやるか。
今日の礼とは言わないが。

あと彼女のクリスマスの予定は早めに押さえておかないと、何も考えずにどこの馬の骨ともわからん男と「ごはん」とやらにふらっと行きそうで怖い。

さてどう誘おうかと考えを巡らせながら、逃げられないよう手をぎゅっと握った。


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拍手、ありがとうございます!!

クリスマス企画に向けてのジャブを少々。
現在プロットを整理しているところなのですが(このペースで果たして間に合うのか…笑)
ハラハラしながらお待ちいただければ幸いです!笑





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