視察途中で洋菓子屋の女性に声をかけられ、暫く話し込んでしまった。

こういう時、大体彼女は別の場所で時間を潰している。(そして大体何か食べている。)
お気に入りはホットドッグだ。
ホットドッグワゴンの主人と仲が良く、行くと必ずと言っていいほど楽しそうに笑いながら会話をしており、
これまた必ずと言っていいほど口の周りにケチャップがついている。

というわけで今日も大方ホットドッグワゴンだろうと予想し、向かったのだが。

「よ、色男!」
「こんにちはご主人。…あれ?」

珍しく姿が見えない彼女。
ほれ、と主人が指をさす方向に目を向けると、何か熱心に頼みごとをされている彼女の姿が。

「なんかモデルかなんか頼まれてるみたいだぞ」
「モデル!?」

見た目は確かに整った顔立ちで可愛らしい彼女である。
まあわからなくもないが、一体何の…

「あ、大佐ー!こっちこっち!」
「どうした、何やってるんだ」
「ちょっとお仕事の依頼が」

にっこり笑ってぽりぽり頭をかく彼女。
その彼女に仕事の依頼とやらを熱心に頼み込んでいた青年が、突然手にしたチラシをこちらに渡してきた。

「あなたも全然軍人さんっぽくないですね!見た目も素敵ですし身長差もいい感じですし…ちょっとお手伝い願えませんか!」

勢いに押されて受け取ったチラシを見てみると、最近オープンした仕立て屋の広告のようで。

「新しいお店だったのでちょっと覗いてみたんですけど、モデルさんを探してるんですって」
「どうですか、お2人の写真撮らせていただけませんか!」
「いや…何だ、何の写真だ?」
「ウェディングです!」

は?と思わず間抜けな声が出た。

「ドレスとタキシードで、こうお2人が寄り添っている写真を何枚か撮らせていただいて…」
「待て待て待て!」
「いいじゃないですか、大佐!お金を頂くわけにはいかないですけど、謝礼として角の洋菓子屋さんのマドレーヌ30個もらえますよ!!」
「何だその謝礼!交渉下手くそか!」
「あっ、お2人撮らせていただければ60個です!」
「やったー!」
「そんなに食ったら高血糖で死ぬ!」
「もうワガママですねぇ…いいじゃないですか、素敵な格好できた上に写真撮られるだけでマドレーヌ60個ですよ!」
「マドレーヌの問題じゃなくてだな…あぁもうちょっとこっち来い!」

ひょいと彼女の首根っこを摘んで一旦その場から離れる。
ニヤケ顔でこちらを見ているホットドッグ屋の主人を目の端に捉えたが一旦無視だ。

「…あのな、ウェディングドレスだぞ」
「聞いてたよ?」
「そんな簡単に着ていいのか」
「え?」
「ちゃんと好きな人の隣で着たい、とか…普通あるだろ、女の子は」

何でこんなことを男から言わないといけないのかまったくもって謎だが、彼女はいつものキョトン顔だ。

「…こだわりがないなら別にいいんだが…好きな人の隣で着る前に、俺の隣でドレス着ることになるんだぞ」
「それ言ったらロイだって条件一緒じゃない。好きな人の隣がいいでしょ?」
「もちろん」
「じゃあロイの方こそ私でいいの?って話になるから、一緒。」
「俺は問題ない」
「え?」
「そのまま本当にお嫁さんにしたいと思ってるぐらいだから」
「…!」

そこまで言って、ようやくこちらの意図を理解してくれたらしい。
赤い顔で完全に硬直した彼女をどうしたものか、と思ったところで後ろからがしっと肩を組まれた。

「仕立て屋の兄ちゃん、この2人連れてくの手伝うわ!さっきから尻がむず痒くて見てらんねぇ、ほれ行くぞ色男!」
「え、ちょっと待て…」
「こういうのは勢いが大事だろ、もうそのまま結婚しろ」
「いや何言って…」
「ほら嬢ちゃんも行くぞ!」
「え、あ、ちょっと…」
「わーすみませんね、あ、お店こっちですおやじさん!」

ホットドッグ屋の主人に無理矢理連行されて撮られた写真は、どこからどう見ても幸せそうなカップルそのもので。
これがまた表通りに面したショーケースに展示されてしまったばかりに、軍部内でもめちゃくちゃ話題となってしまった。
もちろん、ヒューズがこの面白い話題を逃すはずもなく。

「いやーいつの間に結婚したんだよお前らー、言えよー」
「親友の目を欺けるとは、私の演技力も捨てたもんじゃないな」
「演技であの顔できねぇだろー、全く幸せそうな顔しちゃって!ハイこれ結婚祝いな」

と言いつつ書類をどさりとデスクに置く、というミニコントがしばらくの間続くことになるのだった。




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