~マルコ~

「飲み過ぎだよい。」

甲板で家族と酒を飲みながら騒いでいた彼女の手から、グラスが消える

『っあ、マウコたいちょ~、返してくらはいっ。』

頭上で掴み上げられたグラスに手を伸ばすも、空を切る

易々と、更に高く持ち上げられたグラスの先には、呆れ顔のマルコ

「いい加減、部屋に戻って寝ろい。」

『や~れすよ~!今日はぁ~、皆と年越すんれす~!』

甲板に座ったまま、尚も手を伸ばして来る彼女の手から、マルコもグラスを遠ざける

「だったら酒はもう止めとけよい。年越す前に酔い潰れるぞい。」

『らいじょぶれすってば!』

「呂律の回って無ェ奴が、何言ったって説得力無ェよい。」

『………元気れすっ!!』

徐に立ち上がった彼女が両腰に手を当て、虚勢を張る

冷めた目つきで彼女を見ていたマルコの前で、少しずつ頭が後ろに落ちていく彼女の腕を、咄嗟に掴んだマルコ

「っ何やってんだよい!」

『…あれぇ~?頭ってこんなに重かったっけ~~?』

暢気な事を言う彼女の目は、グルグルと回っていた

「…だから飲み過ぎだって言ったんだよい。」

彼女の残した甘い酒を一気に呷り、開いたグラスを家族に渡すと、彼女の体を抱き上げたマルコは、船内へと消えていった

うんうんと唸る彼女をベッドへと下ろし、サイドテーブルの水を口に含む

『ん…っ///』

口移しで彼女の喉へ流し込み、ついでだと言うかの様に咥内に舌を這わせた

「…少し酔いは醒めたかよい?」

『……醒めない。』

トロンとした表情、潤んだ瞳で訴える彼女を見て、マルコはクツリと笑うともう一口、水を口に含んだ

口移しで水を運んでやれば、コクリと飲み込んだ彼女の口端から、飲みきれなかった水が溢れ落ちる

頬を伝い、首筋に溢れた水を舌で舐め上げれば、甘い吐息が漏れる

『んっ、マルコ…もっと欲しっ』

彼女の小さな手に首を引き寄せられ、唇同士が触れる距離まで近付いた

「…水かよい?それとも…?」

誘う様に囁いたマルコの妖笑に、彼女の瞳が熱く揺れた

『…マルコが、欲しい。』

素直に答えた彼女の唇が、マルコの厚い唇に軽く触れた

同時に薄い唇をこじ開け、マルコの熱い舌が彼女の咥内を貪った

「年、起きて越させてやるよい。」

舌なめずりをするマルコの表情に、彼女は思った

年を越しても、寝かせて貰えない―――と





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