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爽やかな水音と誰かの笑い声。それで彼は目覚めた。
強い日差しが肌を焼く。
木陰で横になっていたつもりだったが、いつの間にか太陽の位置が変わってしまったらしい。
大きく欠伸をすると、水音がした方向へと視線を向ける。
そこには水面に花弁を広げる大きな睡蓮が一つ。
まばたきを数回し、もう一度その睡蓮を真っ直ぐにみつめ。
「あ、エジプトさん起きましたか? 一緒に水遊びしません?」
そこにはすでに睡蓮は無く、褐色肌の少女がワンピース姿で水遊びしている姿があった。
ぼんやりとした頭で、セーシェルの姿を見つめながら、手を振りかえした。

水に漂う白いワンピースの裾。
微笑む彼女はまるで太陽の花のようで。

「……睡蓮か……」
太陽と共に開き、夜には花弁を閉じる。
そんな睡蓮と見間違えたのも今となっては頷ける。
「睡蓮がどうかしたんですか?」
いつの間にか彼の前に歩み寄っていた少女は、不思議そうに首をかしげていた。
何かを言おうとし、中々言葉が出ない。
だが、彼女は黙って待っていてくれる。
彼の横に座り、大きく息を吐いた。
「私んとこの海もすっごく綺麗ですけど、ここの河もきらきら綺麗ですね」
「……ん」
それよりも少女の方が美しいと思ってしまったのだが、あえて口にはしない。
楽しそうに話し始めた彼女の話を頷きながら聞く。
様々な話を止め処なく話してくれる。まるで河の流れのように。

「それでですね……」
どれくらい話を聞いていただろうか。
ぴたりと彼女の話が途切れた。
口を閉ざしたまま、彼の顔をじっと見つめ。
「たまにはエジプトさんのお話も聞いてみたいです。どんな話でもいいですから」
まっすぐに見つめられては話さないわけにもいかず、視線を河に向け、しばらく考え込み。
「ナイルの花嫁……」
それだけ呟くと口を閉ざす。
「え? それってなんですか? ねぇねぇ」
彼女の問いに言葉で応えず、彼は視線を河沿いに向けた。
河にほとりに咲いているのは、太陽を愛している花の睡蓮。
彼は意味ありげに笑みを浮かべ、水辺に近づく。
河の中に服のまま身体を沈め、太陽を仰ぎ見る。
大河に太陽の光に水に。神秘的な姿で彼は彼女に微笑む。
その姿に、彼女は少しだけ頬を赤らめ。
「よーし、エジプトさんも水遊びですね。負けませんから」
火照った頬を沈めるため、彼女も河の中へと飛び込んでいった。






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