拍手ありがとうございます!励みになります! 書き上げられずに投げ出してしまった作品1 断片その2 戸に鍵も掛けずにサッと彼方遠くへ歩き去るのを黙って送り、戸を見てみれば鍵らしい鍵もない。蝶番の錆びたそれらしきものがぶら下がっていて、触るとホロリと落ちてしまった。洗濯桶とやらを探しに外へ出ると、女の言った通り、『良い天気』だった。
白と灰の雲が幾重にも立体的に重なり、日の光を反射し眩く瞳を灼く。間から僅かに覗く蒼は淡く、優しく、吹き抜ける風は適度に湿気を含んでいて柔らかい。家屋の反対側には、傾斜の付いた、荒れた野原が広がっていた。明け方に一雨あったのだろう。何処も露にしっとりと濡れ、鮮やかだった。その背には、荒々しい山脈が。世界を例外なく襲った災厄から、奇跡の名を借りて小さな村を守り抜いた山々が、雄々しく堂々とそびえ立っていた。 |
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