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拍手ありがとうございます!励みになります! 書き上げられずに投げ出してしまった作品1 断片その1 ラムサスは時折、思い出したように小皿に盛られた木の実に手を伸ばし、ひとつ、つまんで口の中へ放り込み、ポリポリ、といかにも楽しそうな音を立てて噛み砕いた。
小さな村の小さな酒場ではあったが、客足は絶えず、飲み飽きたものが去ってはまた何処からか、既に相当に酔いの回った者が顔も耳も髪の薄くなった頭までも真っ赤にさせてドアベルをガランガランと鳴らし現れた。大声で喚き立てる者も居れば、一人きりで静かににこにことそれらを見守りながらグラスを傾けている者も居る。皆馬鹿になって、何をしていても、何者であっても、同じ空間を共にする仲間として、そしてラムサスもその内の一人として、違和感無く迎えられているのだった。 また一人、彼の隣から“仲間”が立ち去る。何処か別の店へ場所を移すのか。否、もう家路に着くのだろう。すっかり満足しきった様子で、店主に別れを告げて立ち上がり、ふらりとよろけ、隣人の存在をぼんやりとした眼で認める。不意に、にこっと赤ら顔を皺くちゃにさせ、自分の皿に残っていた木の実をラムサスの皿にザラザラとあけると、その背を嬉しそうな顔でバシンと叩き、後はもう振り返らずに歩き去って行った。 ラムサスはまたひとつ、口の中へ木の実を放り込んで、ポリポリと彼の置き土産を噛み砕いた。 |
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