【コバナシ】

鈴宮家の朝の風景①


「おはよう那々瀬さん。」

「あ、おはよう鈴宮君。」

あの事件から恒例になった朝の挨拶。

寝食を共にするようになってから毎朝欠かさずしている。

しかも食事もお互いの顔を見ながら食べているし。

歯を磨くときも何故か一緒だ。

二人肩を並べてシャカシャカ歯を磨く姿を鏡を通して見ていると何だか・・・

―――新婚みたい・・・。

そこまで考えて顔が真っ赤になる。

―――てててて、ていうか何考えてんのよ私ー!!す、鈴宮君の家には居候してんのよ居候!何で私そんな事考えてドキドキしてんのよ!?ていうか、男の子の家なんて初めてじゃないじゃない!!こ、この前も友達と一緒に行ってきたばかりだし、す、鈴宮君の家はちょっと・・・いやかなり他の家とは雰囲気違うけど、でも、でも、お、同じクラスメートなんだしぃぃぃぃ・・・。

頭の中であれこれと葛藤を続けていると、ふと鏡の中の兇と目が合った。

鏡の中の兇は、赤くなったり青くなったりしている北斗を不思議そうな目で見ていた。

兇の視線に居た堪れなくなった北斗は、誤魔化す様に急いで歯を磨き終えるとバタバタと逃げるように部屋へと駆けていった。

「?」

北斗の葛藤など微塵も気づかない兇は首を傾げながら北斗の走っていった廊下を呆然と見つめていた。


これは鈴宮家に居候してから数日後のとある朝の出来事であった。


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