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お礼SS仁王です(バレンタイン)
ではどうぞ!






「やっぱ幸村だろぃ?」
「や、俺は仁王先輩だと思うっスね。ジャッカル先輩は?」
「俺は今年は柳だと思うな。仁王も可能性はあると思うけどよ」
「ほう、そりゃー光栄じゃ」




部室のドアを開けた瞬間繰り広げられていた意味不明な名前の呼び合いに、思わずあたしは首を傾げた。

部活前のこの時間、既にトレーニングウェアに着替え終わった彼らはラケットを弄んだり軽い柔軟をしながら、口々に部活仲間の名を言っている。


いつもならウェアに着替え終わった後すぐにでもコートに飛び出して練習を開始するはずだが、どうやら今日はお目付け役の真田がまだ来ていないらしい。



「あ、先輩!先輩はどう思います?」
「は?」
「今年は誰が一番かって話!」



入り口に突っ立ったまま「?」という顔をしていたあたしにいち早く気づいた赤也が、嬉々とした表情で問いかけてくるのにやはり意味不明、という顔をしてみせる。

部室の奥、今更ながらあたしの存在に気づいたジャッカル達が興味津々といった表情で返事を待っているのに「そもそも質問の意味が分からないんだけど」と返すと「バレンタインだよ」と面白そうにブン太が口を開く。





「…………………ばれんたいん?」
「そ。今年は誰が一番か、って予想」
「………………………一番?」
「誰が一番多くもらうかって事ッスよ」




きらきらと楽しそうに黒目を輝かせながらそう言った赤也に「………………くっだらない」と返すと「えー」と不満そうな顔を彼らはする。





「誰が一番か予想するだけでも面白いだろぃ?俺は幸村だと思うんだけどよー」
「いやいや、今年は絶対仁王先輩ッスよ!誕生日もすごかったじゃないッスか!」
「俺は柳辺りがいい線いくんじゃないかと思うんだけどなー。仁王は幸村なんだろ?」
「おお。確か柳が去年の一位は幸村やったと言うてたきに」





部長と副部長がいないのをいい事に、好き勝手に騒ぐ彼らの背中にため息をついて部日誌を開く。








どれだけ多くの女子に騒がれてようと、蓋を開けば所詮彼らもただの男子中学生。

しょーもない男の沽券だか知らないが、数を競い合うなどバカバカしすぎて呆れてくる。








大人しく真田の登場でも待つか、と日誌を書き始めたあたしの背後で、「ぜーったい今年は仁王先輩ですって!」と赤矢が未だにうるさく叫び続ける。






「俺は今年も幸村で決まりじゃと思うきに。赤也、お前さんの予想は外れるぞ」
「そっすかあ?俺絶対仁王先輩だと思うんだけどなー……………」
「そうでもなかよ。俺は今年はマネージャーからしか貰わないつもりじゃけえ」






そう仁王が言った瞬間、固まってしまった部室の空気に思わず後ろを振り向くと、驚いた赤也たちの視線と楽しそうな仁王の表情にあう。













え、今この人なんて言いました?

















「………………………………そういうわけじゃけえ、よろしく頼むのう。マネージャー?」











勿論本命しか受け取らんぜよ、と、からかうような口調で続けて、ゆっくりと部室を出て行く仁王を見ながら「………………マジでか」とジャッカルが呆然とした表情で呟く。







「え、ブ、ブン太先輩、ちょ、これ、ま、マジっすか!?」
「お、おおおおおお落ち着けよ赤也!に、にににに仁王、お、おおおおおま、お前!」
「マジでかー!!!!」







一瞬の静寂の後、悲鳴と絶叫で埋め尽くされた部室の中、シャーペンを持った姿勢のまま固まってしまったあたしを皆が驚愕の視線で見つめる。










ちょっと待って、よろしくって、本命って、つまりはえっと、そういう事ですか。









去り際に呟かれた彼の言葉が、頭の中で何度も繰り返されてはあたしの思考を停止させる。






ああ一体どうしたらいいんだろう。





バレンタインを目前に控えて、なんとも厄介な相手に目をつけられた事に、嬉しさよりも戸惑いを隠せない恋の始まりだった



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