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拍手ありがとうございます! お礼SS手塚です。 ではどうぞ↓ 伏せた長いまつ毛の影を落として、手塚国光は椅子に腰掛けたまま熟睡していた。 「うーわー…………めっずらしーもん見ちゃったよ」 こくりこくりと間抜けに船をこぐでもなく、部室のパイプ椅子に腰掛けて腕組みをしたまま、手塚はしかめ面のまま眠っていた。 なるべく物音を立てないようドアを閉め、静かに洗濯の終わったタオルをたたみ始めるが、目の前の彼が目覚める気配は一向にない。 よっぽど疲れてるんだなあ、と机の上に散乱した書きかけのスコアやオーダーなどの書類を手に取りまとめると、几帳面な手塚らしい字が綺麗に羅列している。 (…………………ほんと、忙しいんだろうなあ………) とんとん、と書類をまとめながら、腕組みしたまま眠り続ける手塚の顔をじっと見つめる。 端正な顔立ちの上にのったフレームレスの細い眼鏡、さらりとした黒い髪に少しだけ陽に焼けた肌。 眠っている時でさえ大人びた表情は男なのにどこか色気が漂っていて、見慣れた顔なのにどこか緊張してしまう。 「……………………うーん。手塚の事好きになる子の気持ちが分かるかも……」 このルックスで生徒会長、果てはテニス部部長まで務めるのだから魅力的でないはずがない。 ドア越しに響くテニスボールの弾む微かな音と歓声を聞きながら、役得とばかりに整った顔をまじまじと見つめ続ける。 いつも隙なく装っている手塚の寝顔なんて、今を逃したらもう二度と見る機械など訪れないだろう。 片付いた机の上に両肘ついて、腕組みしたまま眠り続ける手塚の顔を至近距離でじっと見つめる。 男のくせにやけに綺麗な肌に思わず触れたくなって手を伸ばしかけた瞬間。 「……………そう熱心に見つめられると非常に居心地が悪いんだが」 気まずそうな声音で響いた呟きと共に、長いまつ気を震わせて手塚の瞳がゆっくりと開く。 切れ長のまぶたを難儀そうに持ち上げて、伏し目がちに視線を宙にさ迷す仕草を色っぽい、と思う暇もなくばっちりと至近距離で視線がかち合う。 「…………随分長いこと見ていたな。何か俺の顔に面白いものでも見つけたか?」 「い、いえ…………ってゆーか、お、おおおおおお起きてたの!?」 「ああ。昔から人の気配には敏感でな」 あたしが片付けた書類をぱらぱらとめくりながら、しれっとした表情で言う手塚に返す言葉もなくぱくぱくと口を開閉させる。 一体いつから起きていたのか。 触れようと伸ばしかけた腕もそのままの体勢で、あわあわとうろたえるあたしの指先を手塚は一瞥して、ゆっくりと席を立つ。 「……………少し早かったか」 「へ!?」 「あと少しだけ目を閉じているべきだった、と思ってな」 ―残念だ。 いつもと全く変わらないポーカーフェイスでそう言ってのけた手塚に、なんて言えばいいのか分からずに真っ赤な顔でぱくぱくと口を開閉させる。 残念って、それって、つまり、あたしに触ってほしかったって、まさか、そういう意味なんですか。 夕日の差し込む部室の中、洗濯物に囲まれて赤面し続けるあたしを置いて出て行った手塚の顔も、同じくらい赤かったと聞かされるのは、もう少し後の話。 |
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