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【ランダム拍手用連載小話:計4話】
・夏休みの会話 ver.おお振り:泉孝介
・夏休みの会話 ver.庭球:越前リョーマ
・夏休みの会話 ver.笛!:椎名翼
・夏休みの会話 ver.復活:雲雀恭弥
(※全てネームレスです)

夏休みの会話 ver.庭球:越前リョーマ

本を読むと世界にのめり込んだように集中してしまう。 名前を読んでもそんなの気付かない。だから、わざと背後から近付いてみる。 彼女が手にしている本の一文を盗み見て耳元で声のトーンを落として読み上げてみた。

「『―ネェ、アソボウヨ』」
「ひ、ひゃあああ!」

リョーマの声で、びくついたようにその場で本を投げ出す。 そんな私が落とした本を拾い上げて、リョーマは息を吐く。

「やっと気付いた」
「リョ、リョーマ!あー、びっくりしたぁ」

胸を撫で下ろす私にリョーマは拾った本を手渡す。

「ホラー嫌いなくせに、そんな本読んでるからだろ。でも珍しいじゃん」

サスペンスは好きだけどホラーは嫌い。 リョーマからしてみれば、どっちも似たようなものだろとも思うかもしれないが、私からしてみれば全然違う。 謎解きがあるのと未知の存在で驚かされるのは、また別物だ。
だけどそんな私がホラー小説を読んでいるのには理由がある。

「私の好きな作家さんが初めてホラー小説書いたんだ。ファン心理としては怖いけど読みたいじゃない?」
「ふーん」

興味ないと言ったようなリョーマの返事。 まぁ、予想はしていただけに素っ気ない返事に思わず私はクスリと笑ってしまう。

「それより何か用事?」
「別に」
「え?ないの?」
「ないけど」

平然とそう言い、私の隣に座り込むリョーマに呆気にとられてしまった。

「あのさ」
「なぁに?」
「ちょっと外、出ない?」
「え?いいけど…どこいくの?」
「少なくとも寺じゃないから安心しなよ」

冗談めかしたようなリョーマの言葉に互いに笑みがこぼれる。 立ち上がるリョーマを追いかけるように私もドアを開けた。


「商店街…だけど特になにか用事があるわけじゃないんだ」
「まぁね」
「あ、見て見て!かわいい!」

ふらりとリョーマと一緒に商店街を歩いていたら、 雑貨屋の窓から見えるウサギのぬいぐるみが目に入る。

「うさぎ!」

私が頭に両手を当てて、ウサギの耳の真似をしてみるとリョーマが眉間に皺を寄せて、顔をしかめる。

「かわいい…?これが?」
「かわいいよ!かわいい!」
「…どう見ても間抜け面だと思うど。誰かさんみたいに」

そう言いながらウサギのぬいぐるみから、 私へと視線をかえるリョーマに、私はムッとしたように頬を膨らませる。

「ちょっと、それ私のこと?!」
「そうなんじゃない」
「リョーマ!」

私をからかうようにリョーマが笑う。 「ほら、行くよ」という声と共に、リョーマが私の手を掴んで歩き出した。

「…ちょっとリョーマ、誤魔化してない?」
「別に。そんなつもりないけど」
「本当にー?」

だけど、こんなので許してしまう私も私だと心の中で思う。
繋がれた手の温もりで徐々に体温が上がっていく。

「(やっぱり…好きだなぁ…)」

何も言わずに前を歩いているリョーマの顔を私はチラリと覗き込む。

「……なに」
「ううん。なんでもない」

私がリョーマの顔を覗き込むと少し赤く染まる頬に、 素直じゃないなぁと思うと同時にリョーマらしくて可笑しくなった。

――たまには、こういうのも悪くない。

互いに思う心を二人とも声には出さずとも、繋がれた手がその意味を示していた。
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