ぽて江の大冒険~恋の鞘当ては前途多難?!~
ぽて江は途方に暮れていた。
というのもどっちに行ったら自分の群れがいるか、どっちに自分たちの巣があるか分からなくなってしまったからだ。

このぽて江はまだこの春に生まれたばかり、およそ一か月ばかり経った個体だった。
同じ時期に生まれたものは他にも大勢いたが、その中でも一番のお転婆ではねっかえりなのがこのぽて江だ。
外の世界を見てみたい、他のぽて種にも会ってみたいと年かさのぽて江たちを困らせていたのだが、今日遂に皆の目を盗んで巣からこっそり出てきてしまったのだ。
初めて感じる外の空気や頬を撫でる風にはしゃいで、見た事もない大きな動物――とは言っても野良猫の類だが――に追いかけられてついつい道が分からなくなる程遠くまで来てしまった。

「ぽて、ぇ……」

あっちを向いても、こっちを向いても背の高い草に囲まれて、陽はどんどん陰ってくるし風は冷たいし、でぽて江は肩から羽織った白装束を身体に巻き付けた。
何やら大きな水たまりの前についたところで、ついにぽて江は疲れきって手頃な大きさの石に腰を降ろした。

「ぽて、ぽてっ……」

ざわざわと風に煽られた草が鳴らす音に恐怖心が増し、ぽて江は恐いモノから隠れるように小さな身体を益々縮める。

お腹は空くし、空気は寒いし、段々と暗くなっていく空が心細さを増幅させぽて江は遂にわんわんと泣き出してしまった。
大人ぶっていても何しろまだ生まれて一か月の子供なのだ。
なんで大人の言う事をちゃんと聞かなかったのだろう、と後悔しても後の祭り。
今頃群れの仲間は自分の事を探してくれているのだろうか。
それとも言う事をきかない悪いぽて江は捨てられて、今はみんなで暖かい食事を摂っている頃だろうか。
寂しくて、悲しくて、心細くてぽて江は人目も憚らずに泣きじゃくった。

だが、そこに救いの手が現れた。
それはぽて江が初めて見る”人間”だった。(実際、”人間”というには語弊があるが今のぽて江にはまだそれを知る由もない。)


「ああ、ほら青江。見てごらん。珍しいね、こんなところにぽて江がいるよ。さっきから聞こえていた泣き声はきっとこの子のものだね」
「君がよく気が付けたものだねぇ」
「まあね。――ああ、可哀そうにこんなに涙にくれて。どうしたんだい?群れから逸れてしまったのかな。悪いようにしないからこちらへおいで」

ぽて江から見たら、さっきまで見た動物よりももっともっと大きい生き物で恐れを抱くべきものなのかもしれないが、差し出された掌や耳に響く優しい声音に惹かれてぽて江はその掌の上へと飛び乗った。



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ぽて江の群れとか書いてたら、ジ●ゼ牧場を思い出してしまいました…。
かなり方向性の違う群れだ……。

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続きました。
今のところ2枚目までお礼SSがあります。





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