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『Can't be Honest』

 ピンポーン、とドアチャイムの音が鳴ったのは日付が変わろうとしている時間で、こんな時間に家のドアのチャイムを鳴らす心当たりは一人しかいなかった。しかし、同棲する前ならいざ知らず、同棲している今となってはチャイムを鳴らす必要もないのになぜ鳴らすのか。鍵を忘れたのか。いやそれなら正面エントランスを通れないはずだ。と、首を傾げながら克哉は玄関に向かいドアを開けた。

「おかえりなさい、御堂さん」

 果たして予想どおり玄関前に立っていたのは御堂だ。スーツの上からロングコートを羽織った姿は、取引先の接待に赴いたときの姿そのままだ。

「遅かったな」
「先方がなかなか帰してくれなくてな……ただいま」

 ただいまの言葉と共にふわりと抱き締められた。冬の外気に冷やされたコートの生地がひんやりと触れる。
 思わぬ御堂の行動に驚く。内廊下に他の人影はないが、体裁を気にする御堂は部屋の外では決してこんな行動は取らないはずだ。
 御堂の頬は赤らんでいた。外の寒さに当てられたのか、それともアルコールのせいで上気しているのか。

「酔っ払ってるのか」

 玄関先で抱きついてくる御堂を、とりあえず玄関の中に引き込みながらドアに鍵をかける。
 取引先に勧められるがまま散々飲まされたに違いない。呆れつつ、御堂のコートを脱がそうとしたところで両手で顔を挟まれた。「克哉…」と乞うように名前を囁かれ、唇を押し付けられる。

「ん……っ」

 御堂は甘く喉を鳴らしながら、克哉の声ごと食べようとするかのように唇を深く噛み合わせ舌を差し入れてくる。いつになく甘えた仕草に克哉も御堂の舌を強く吸い上げた。籠もった音が口の端から漏れ、その響きが艶めかしい。
 チャイムを鳴らして克哉を呼び出したのも、待ちきれないようにキスをねだるのも、酩酊して、理性の箍が外れたからだろう。
 そんな恋人の姿を愛らしく思ったところで、あ、と気付いた。
 御堂からアルコールの匂いはしなかった。こうしてキスをしてみれば一目瞭然だった。
 御堂は酔っ払っているのではない。酔っ払ったフリをしているのだ。
 酔っ払ったフリをしないと、こうして克哉に素直に甘えられないからだ。
 たまらないほどの愛おしさが沸き起こる。
 今夜はこの可愛い恋人を徹底的に甘やかそう。
 そう誓って、克哉は御堂を腕の中に閉じ込めた。

(2023.12.5)




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