・会社の飲み会の翌日、自宅にて・




「……」
「……」


朝の光が爽やかに降り注ぐ室内で、
あたしと吉澤ひとみは背を向けて脱ぎ捨ててあった服を着直した。


ものっすごい微妙な沈黙がそこに居座ってて。
朝目が覚めたときの間抜け顔は互いに一生忘れないだろう。



何でこんなことになっちゃったんだか。
酔った勢いって奴だ。完全にそれだ。
だけど。だけど。だけど。


よっすぃー女だし。
男みたいだけど普通に女だし。
あたしも女だし。
お互い彼氏いるし。


そういう趣味ないし。
今までそんな風に見たことなかったし。



「…あやや」
「!えっ、なんっ…何さ」
いきなり話しかけられて必要以上に驚いてしまった。


「あ、ごめん」
「いや…」
「……んと…」
「…何?」


よっすぃーは目を泳がせた。
あたしから視線をそらす。



「……覚えてる?」



流れ的には、昨日のことってことだろう。
…あたしは、首を振った。



「だよね、そりゃそうだ」
「覚えてるくらいだったらこんなことになってないでしょ」
「だよね」
「…まあ、忘れよ。なかったことにしよ」
「ん、ほんとお酒はほどほどにしなきゃね」
「うん」
よっすぃーは、何だか微妙な笑顔だった。
完全に自分に呆れてるのともちょっと違う感じの。
もしかしたらあたしもそんな顔してるかもしれない。



「あ、じゃあお邪魔したから帰るね」
「ああ、うん」


そそくさと帰る支度を始めたよっすぃーの
白いうなじに赤い跡が見えた。
言おうかと思ったけど、思いの外言えなかった。
何となく言えない空気を出されてた。



誰もいなくなった部屋で。



曖昧ではっきりしない記憶の中で。
ただひたすらに、本当に純粋に、
めちゃくちゃ気持ちよかったことだけが焼き付いて離れていなかった。


…多分、よっすぃーも。



だからこそ何も言えなかった。





おわり。(よしあや)




ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。