宿舎に帰るの、億劫だな。
自分の姿を顧みて、ユーリは声に出さずにぼやいて嘆息した。
今の自分は、お世辞程度には何でも無い風を装えるが、あの目敏い親友が気付かないはずはないだろう。
頬に擦り傷はあるし、騎士服はあちこち汚れているし、背に流れた髪も何処か縒れている。
ただ、自分は助けようとしただけだ。
何をどう間違ったのか、風の悪戯で飛ばされて木の枝に引っ掛かった帽子を取ろうとした子供が、何とかよじ登ったまでは良いが降りられなくなって。
下で受け止めてやるからと手を広げても、恐怖で身が竦んで動くことさえ出来ないというので、上まで木登りをする羽目になったのだ。
自分の腕に抱え込む寸前、子供がバランスを崩して地面に真っ逆さま。自分も追いかけて、子供を抱きこんで真っ逆さま。
だが、無事に一回転して着地も出来たし、子供も無事だった。全て丸く収まってめでたしめでたし。
だから。その後、落下と同時に踏ん付けてしまった騎士と喧嘩になったのは不可抗力だ。断じて、自分のせいではない。
そんな少し前の過去をたらたらと脳裡に甦らせていると、今最も顔を合わせたら駄目なはずの親友が真正面から歩いてきた。
―――あー、腹括るか。
ここまで来たら、大人しくお説教を食らうのが最善だ。そして、適当に聞き流す。長年の付き合いから、親友の扱いを一番心得ているのは他ならぬ自分なのだ。そして多分、それはあいつにも言える事。
声をかけられるまで、後五秒。
あの親友は、自分の姿を認めて。次には苦笑を浮かべてこう声をかけながら、治癒術を施してくれるのだろう。
「・・・・・・今度は一体何をやらかしたんだ、ユーリ?」
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