拍手お礼小説
「抱きしめる」
※全三種※

A night in winter


雪が降った。一面まっ白になった。
息も白くそまり、肌も血の気を失うほどに冷たい。
ふ、と、息を吐けば吐くほど魂が出て行ってしまうようだ。
駅前の公園で、午後十時、真っ暗な中に
雪の白さだけが煌々としていて、目がしぱしぱとする。

「ごめん、遅くなった」

その声に顔をあげると、サクマが両目をくるしそうに瞑って立っていた。
走ってきたのか、はあはあと息を切らして頬を赤らめさえしている。
熱いのだろう、首にしっかりと巻いていたマフラーをほどいて
手のひらではたはたと顔をあおいでいる。
雪も白く、その手も白く、私はうまく自分の目で追えない。

「どうしたの、まばたきばっかして」

私が座っていた、公園の入り口のポールの、隣のポールにサクマは座った。

「雪ってこんなに白いんだね。サクマの手も白い」
「手袋忘れてきちゃった」
「そっか」
「うん。でも走ってきたから、暑いし」

彼はその白い手を、蝶々みたいにひらりと動かして
私はもちろん、それを上手く追うことができなかったのだけど
一生懸命瞬きをしていたその瞬間に、抱きしめられた。

かすかに汗のにおい、サクマのトレーナーのにおい、
走ってきたときについたのか、夜と雪と冬のにおいがする。

「カコと一緒に、どっかにいけるのが、嬉しくて温かい」
「殺し文句」
「死なないで」

サクマはけらけら笑った。
ポケットにはなけなしの全財産、バックパックには少しのお菓子。
私たちは、これから、冬の夜にまぎれこむ。

けれど、雪の煌々とした光で、少しも怖いとは思わなかった。


END

***

甘いお話書いてみました。
「抱きしめる」というテーマで他に二つ書いてますのでよろしければ
ぱちぱちしてやってくださいましまし。
拍手ありがとうございました^^



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