拍手ありがとうございました! SSリクエスト受付中 拙いですがお礼SSです。楽しんでいただければ幸いです。 (注意:R15です!) 現在のお礼SS数:3 髪結い残暑の残る夕方、起きてきたアカザは薄い着物一枚を身に着けただけの姿だった。
お風呂に入ってきたのか、全身がほんのりと濡れていて、背中の中ほどまである特徴的な緋色の髪もぺったりと頭に張り付いていた。 首に手ぬぐいを引っ掛けてそれで適当に髪を拭っていたけれど、面倒になったのか途中でその手を止めてしまう。 そして庭に向けて開け放してある障子から残暑にぐったりとしている私の部屋に入り込んで、寝そべっている私の顔を覗き込んだ。 「またしンどいか?」 問いかけに視線を上げると、見るともなしにアカザの着物にじわりと水滴が染みを広げていくのを見て軽く眉間に皺を寄せる。 「ちゃんとして。だらしない姿で近づかないで」 うなるように言うとちょっときょとんとしてから、ああ、と要求を理解した応えが返る。 「こッちのが涼しいからいいンだよ」 分かっても改めるつもりはないらしく、意地悪そうな笑みを口の端に浮かべた。 アカザにこれ以上言っても無駄だということくらいすでに分かっているので、それ以上無駄なことを言うのは止めて、だるい身体を起こして立ち上がる。 身を整える道具が入った箱を取り出すと、縁側を指差した。 「そこに座りなさい」 「何すンだ?」 「結うに決まってるでしょう」 問いかけに簡潔に答えると、アカザの首から手ぬぐいを奪って縁側に追い立てる。 アカザの脇に持っていた箱を下ろすと、濡れたままのアカザの髪を手に取る。 そして大人しく縁側に腰掛けたアカザの髪を奪った手ぬぐいで多少乱暴に拭ってやると擽ったそうに首を竦めたけれど、私の好きにさせるつもりか抵抗はしない。 「近づくなッつッたのに」 「揚げ足を取らないで。いつまでもそんな格好で目に付くところにいられるよりマシだわ。いつも結いもせずに流しっぱなしじゃない」 「のびたら適当に切るからいいンだよ。自分で結ったこともねェし」 「私の気分が悪いのよ、だらしない」 きちんと髪から水気を取り去ると、手にした櫛でゆっくりと丁寧に、絡んだ部分も髪が千切れないように髪を梳き撫でる。 だいぶ放置しているわりにはサラサラとしていて指に気持ちがいい。何よりアカザの背後を取っていることに安堵すると共に優越感が増す。 意外に楽しいと思いながら手の中に纏めた髪をきゅっと組紐で結わえる。 なかなか綺麗に出来たと思いながらも、青の紐はその血を梳かした様な髪の色にはあまり合ってないと思った。 「これでいいわ…ッあ!」 髪から手を離そうとすると、素早く上体を捻ったアカザにその手を取られて軽く引き寄せられる。 バランスを崩して男の腕の中に崩れ落ちる。 囚われた私の首筋をするりとアカザの大きな手が撫で上げて、ぞくりと走った悪寒にも似た感覚に肩が震えた。 そのままその手が私の髪を掬い上げて、梳き撫でるように指の間に通しながら軽く引っ張られる。 「俺にも好きなだけお前の髪を触らせてくれると嬉しいンだけどな」 引かれた髪にアカザの唇がそっと触れて囁く。 「させるわけないでしょう」 内心は軽いパニックになりながらも、長年染み付いた癖で無表情になり冷たい声が発せられる。 「別にいいさ。好きにする」 逃れようと捩った身体を捕まえられて、ひょいと抱き上げられる浮遊感に驚き思わずアカザにしがみついた。 その様子にアカザがかすかに喉を震わせながら、部屋に運ばれて布団に下ろされる。 私の抵抗なんて赤子の手を捻るより簡単に押さえ込まれて、先ほど意外に気持ちいいと思った髪がさらりと、剥き出しにさせられた生身の肌の上を滑っていく感触にぶるりと身体が震えた。 しばらくすればせっかく結った髪が無意識に伸ばされた私の手に乱されて組紐が解け、緋と黒の糸が汗ばんだ肌と褥の上で絡まり交じり合い乱れてしまっていたけれど、私がそれに気づいたのは疲労困憊で眠りについて目覚めた朝のことだった。 |
|