13.年の差ルイヒル  16.05.30


     “若葉キラキラ”


    さすがにもう春と呼ぶには季節も進んで、
    宮中の奥向きにある薬草苑では
    渡来の茶の茂みに顔を出した初々しい新芽を係の仕丁らが摘んでいたりし。
    様々な花も新緑に映えるよな存在感を醸し、
    こでまりやユキヤナギの白が新緑に映えて鮮やかで。
    紫陽花は万葉集にも出てくるとされるほど古く、
    それもそのはず、日本が原産という花だが、
    現代多く観られる真ん丸な手毬咲きのは
    一旦西欧へ持ち出されて品種改良された“セイヨウアジサイ”で。
    もともとはガクアジサイと呼ばれる方のが原種だそうな。

     「ちなみに夏の季語だ。」
     「お師匠様、俳句はまだありません。」

    和歌って季語は要らなかったっけ?(おいおい)
    こんなレベルの奴が書いてるのがそもそも問題かもしれないようなお話ですから、
    さびれて荒れ放題という設定の陰陽師殿のお屋敷の庭も、
    結構な緑が瑞々しく萌え始めてもおり。
    何の雑草ばかりじゃねぇかなんて、
    相変わらず悪態ばかりついてるお館様だが、

     「そんなことありませんよう。」

    畏れ多くも東宮様が株を分けてくださった梅や椿もありますし、
    くうちゃんがあぎょ、
    阿含さんから貰って来たカエデや金木犀もすくすく育っておりますしと。
    そういった草木のお世話も受け持っている書生くんが、
    我が子も同然な彼らを貶めないでと言いたいか、
    ぷんぷくぷーとやわらかそうな頬を膨らませるほどで。

     「進さんや葉柱さんもお手伝いしてくださっているのに。」
     「…もしかしてそれはズルと言わねぇか。」

    人ならぬものの加勢が加わっているなんて、
    勝手が判らない素人の世話とはもはや言えぬ。
    見事に育って当然で、むしろズルい手なんじゃあないかいと、
    珍しくも蛭魔の側が むむうと眉をひそめて、
    やりこめられた側になっているのもご愛嬌。
    お手伝いしたと持ち出された蜥蜴の総帥様は、
    雑草もあるがサツキやニシキギも若葉が萌えてにぎにぎしい庭先にて、
    子ぎつねの双子さんたち相手に、やあたあとお相撲の真似ごとを挑まれていて、

     「おととしゃま、えいっ」
     「おととしゃま、まいった?」

    尻やら膝やらを小さなお手々でエイエイと押され、
    勿論そのくらいじゃあくすぐったいばかりの偉丈夫さんだが、

     「やや、これは強いな。」

    時々ぐらぐら、あとじさったりする芸達者なものだから。
    もちょっとだぞ ばんばろ、うん ばんばると、
    小さな腕白たちが躍起になるのがまた可愛い。

     世間様からは あばら家屋敷と毒づかれつつも、
     いろいろなものがすくすくと芽生えて伸びんとする、
     そんなお屋敷の初夏でございます。



         ~Fine~  16.05.30




     *あまりに更新しなさ過ぎなので、
      久々に拍手お礼を更新。
      …違うだろと突っ込まれそうですね。(とほほ)




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