なんてことはない昼休み。
学生さんはお待ち金のお弁当タイム。
それぞれ仲良しメンバーで穏やかに過ごす楽しいひと時…のハズが。

「ちゃう!ちゃうねんて!!」
「はやて、アンタ…」

その場にふさわしくない、恐怖を多分に含んだ叫びが屋上に響きます。
その声の主、はやてさんの顔は青く、嫌な汗が流れていました。
もうひとつの声はアリサさんのもので、彼女は呆れ顔の中に同情の色を見せています。

「…命なくなるわよ?」
「…っ!!」

脅しでもなんでもないアリサさんの一言は、はやてさんの顔色はより青を濃くしました。
よほど何かを恐れているのでしょうね。
アリサさんもその辺に覚えがあるようで、激しく震えるはやてさんを宥めようと珍しく慰めの言葉をかけました。

「今の状況をあの子に見られたら、の話だけどね」
「あかん、早う起こさんと」
「ごめーん、遅くな…った」

カチャ、とドアが開き姿を見せたのは、先程アリサさんが言っていた「あの子」。

「あ…」

――なのはさんでした。

なのはさんは屋上に出て最初に目にした光景に語尾が小さくなりました。
彼女の目に入ったもの。
気持ちよさそうに夢の世界へ旅立つ愛しのフェイトさんと、フェイトさんに抱き枕の如く抱きつかれるはやてさんの姿でした。
誰が見ても被害者ははやてさんであるこの状況。
しかし、なのはさんにはそんなの関係ありません。
フェイトちゃんは私のもの、フェイトちゃんと密着していいのは私だけ、私以外は誰であろうと許さないの。
某管理局でのスピーチにおいてそれらを言い放つほど溺愛する彼女の状況を、なのはさんが許すわけもなく。

「どういうこと、なのかな…?」

最近、管理局内で悪魔から魔王に格上げされたなのはさん。
なんと的を射た表現だと感心してしまうほどのどす黒いオーラと冷たい声で、被捕食者、はやてさんを問い詰めます。
そんなオーラに完全に圧倒されるはやてさんは恐怖のあまり言葉が出ません。
このままでは話が進まない、とアリサさんが代わりに答えます。

「この陽気のせいでフェイトが堕ちて、おもしろがったはやてが隣に座って悪戯してたら抱きつかれて今の状況、って感じ?」
「アリサちゃん!?」
「なによ、本当のことでしょ?」

確かにアリサさんは真実を至極簡潔に述べました。これ以上ないくらいの真実でした。

「そやかてそんな言い方したら…」

はやてさんの額から頬、顎にかけて汗が流れました。
人はそれを脂汗と呼びます。

「いたずら…?」

アリサさんの報告の中に気になるワードを見つけたなのはさん。一段とオーラが濃く、重苦しいものになっています。
かつてない事態に、はやてさんは恐怖を隠しきれずガクブルと震えることしかできません。
そんな哀れな友人を横目に、なのはさんの後ろで半ば空気と化していたすずかさんに声を掛けるアリサさん。

「すずか、行くわよ」
「うん。なのはちゃん、フェイトちゃんのこと起こさないようにね?」
「え!?すずかちゃんそこ心配するん!!?」
「うるさいよ、はやてちゃん」

すずかさんに華麗にスルーされたはやてさんは抗議の声を上げますが、届くことはなく屋上の扉は閉ざされてしまいました。
代わりに聞こえてくるのは魔王の囁きと天使の寝息。
まさに究極の板ばさみの中。

「少し…頭、冷やそうか…」

魔王からの死刑宣告が、下された――




――――――
フェイトさんが空気過ぎる件ww

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