【素直になれない人で10のお題】
06: 好きになる程、苦しかったわ、貴方といることが(沖チナ)

好きだと思ったきっかけはチナミも明確には覚えていない。ただ総司は目に見えて変化をしてきていたし、その変化を好ましく感じる自分がいるのも確かなのに、何故かチナミはこれ以上好きになりたくはないと思った。
同性だから、というわけではない。外聞や一般的な概念などではなく、本質的に恐ろしかった。
(こいつはいずれ……)
総司はいずれ、自らの意思で刃を取り、道を選ぶ。それが己が身を滅ぼす道と知りながら、敢えてそれを選ぶだろうことをチナミは勘づいていた。総司とチナミは対であり、何より朱雀を使役することによる代償をチナミは知っている。兄と同じように蝕まれ、そして身体の弱い総司は間違いなくそれにより身を滅ぼすと。
もし、普通に生活をするならば助かるかもしれないと淡い期待を抱きそうになるが、総司はそれを選ばないことを知っている。そして、チナミは喪失の恐怖を嫌という程知っている。
(いずれ、死に逝く奴を想っても……)
チナミはそれを幸せだと言えない。いずれ来る痛みに怯えて暮らすことなど堪えられないし、そしてその喪失は今度こそチナミを壊すだろうことを知りながら、何故その人を好きでいられるか――。
けれど、恋心を消すことは出来なくて、好きになる程に苦しかった。


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