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<午睡>

かさかさと、音がした。


縁側沿いの和室の、襖をそっと開けて中を覗いた。
庭につづく障子が開けてあって、涼しい風が俺の顔を撫でた。


畳で、タオルケットにくるまって寝ているのは二人のお子様だ。
くまのぷーさんとか、そんな名だったか熊柄のそれから頭だけだして
くっつくように丸くなって眠っている。

先刻のカサカサは、近くに置いてある虫籠からきこえてくる音だった。



(あー・・クワガタ、2匹捕れたって言ってたっけ)

戦果をみせにきた子供達に、翔子がキュウリとメロンの切れ端をやってた。
餌も与えたから安心したんだろう。

まあ朝っぱらから木登りなんぞして遊んでたんだから、疲れて当然か。



(あの子ら、なんだか知らんがすぐ仲良くなったな~)


雲雀くんは、子供らしくない冷めた瞳の子供だった。
でも、まとわりつく年下の何も邪心のないガキにも、案外面倒みがよくて。

初めて会った日からうちに泊って、朝早くに公園まで遊びにいった。
結構帰りが遅かったのでどうしたのかと思ったら「森にも行った」とあっさり言われた。



誰にでもなつくある意味天然馬鹿なうちの子と、大人びてる雲雀くんは
存外、相性がよかったらしい。

翔子に
「割れ鍋にとじ蓋っていう奴だっけ?」といったら

「それをいうなら御神酒徳利(おみきどっくり)とか、良い例えがあるでしょう」と返された。

なるほど。
物は言いようだな。


ただ今の問題は。
翔子に、じき昼ごはんだから子供たちを起こしてきてくれと言われた・・んだが。


「・・・翔子。飯、もうちょっと後になってもいいか?」

「あら。どうしたんですか?二人は?」

「雲雀くんは、起きてたんだが。・・・あの子は寝てて」

「?」

「起こそうと近づくと、雲雀くんが睨みつけて威嚇してくるんだ」



俺、父親なのに。

昨日会ったばかりの馬の骨(いや人間だが)に娘をとられた気分だ。

でも、そう翔子に訴えたら「いつかほんとにとられるのよー」とかひでえこと言いやがった。


家庭内が冷たすぎる。
ぐすん。



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