お礼画面はこの一種類です。
『テニプリ』小説『氷帝学園にヤンキーがいる』

「あ、侑士」
 向日岳人は、氷帝学園中等部テニス部の中の様子を伺っている忍足侑士に気付いた。
「何してんの?」
「――岳人! しーっ! しーっ!」
 忍足は「静かに!」のジェスチャーをする。
「テニス部にヤンキーがおるんや。入ろうと思うんだが……その、怖ぉての……」
「ヤンキー? 亜久津みたいなヤツか?」
「結構きりっとしたええ男なんやが、あの髪はどう見てもヤンキーにしか見えへん。それで、俺、もう一時間も様子見とったんや」
「暇人……」
「ほっとけ」
 忍足が毒づく。
「回りくどいことはなしにしてさっさと入ろうぜ。おーっす」
「あっ、岳人!」
「おっ、岳人に忍足か」
「へっ? その声……跡部?」
 忍足が間の抜けた声を出す。
「――ウス」
 傍には樺地もいる。
「そうだが、何か?」
「カツラは?」
「どっかにやった。もう新しいのが届いたと思うが、たまにはこの髪型もいいな」
「――ウス」
「岳人、知っとんたんか?」
「知ってるも何も、跡部しかいねぇだろ」
「なぁんや。俺てっきりどこぞのヤンキーがテニス部に道場破りに来たのか思てしもてん」
「ところで忍足。一時間も部室の外で何やってたんだ?」
「あ、気付いとったんか」
「それがさぁ、侑士のヤツ、跡部のことヤンキーだと思って近寄れなかったんだって」
「う……や、だって、その髪型慣れへんもん」
「馬鹿野郎。こんな男前のヤンキーがいるか」
「ウス」
「あー、でも、ヤンキーやなかったんやね。あー、良かった」
 忍足が安堵の吐息をつく。
「ちぃーす」
「越前!」
 越前の登場に忍足と岳人の声が重なった。
「何で青学のお前が氷帝に来てんだよ」
「お久しぶりです。跡部さん。――跡部さんの顔を見に来ました。今日はカツラ無しなんですね。嬉しいです」
「はぁ?」
「髪ちょっと伸びました? やっぱりその髪型も似合いますね。自分で言うのも何だけど俺の腕もなかなかのもんじゃん」
 跡部は越前リョーマに負けて髪を刈られたのだ。
「な……なぁ……侑士。越前て……」
「岳人……ツッコんだら負けや」
 忍足と岳人がひそひそと話し合う。
「せっかく来たんだ。茶でも飲んでくか?」
「いいんすか?」
「ああ。樺地の淹れた茶は最高だぜ。なぁ樺地」
「――ありがとうございます」
「じゃあ一杯もらおうかな。実は喉カラカラなんだよね」
「なぁ、越前。――お前、あれは跡部に対するイヤガラセやったんか?」
 と、忍足。
「何が?」
「跡部の髪を刈ったやろ。跡部をヤンキーにしたんはお前や」
「俺、ヤンキー嫌いじゃないもん」
「ほな亜久津は?」
「あの人はジャンルが違うから。暴力はいけないよね、やっぱ」
「跡部の髪に対する扱いは暴力ではないんか?」
「だって、約束したもんね。試合の前に。ねぇ、跡部さん」
「ああ。仕方ねぇよな」
「ほら、跡部さんもこう言っていることだし」
「跡部……お前、案外お人好しやなぁ」
「でも、お人好しな跡部さん好きですよ」
「越前、ちょお黙っとき。――そういや、誰も訊いてないけど、越前、青学のテニス部の練習は参加せんでもええのんか?」
「氷帝にスパイに行くと言ったら喜んで送り出してくれました」
「――心臓強ぇな。青学のヤツら……」
「その代わり明日はグラウンド100周だと言われました」
「やっぱりめっちゃ反対されとるやんけ」
「それからスパイに行くんだったらそれなりの成果を上げて来いと乾先輩に言われました」
「ああ、あの汁の男か……」
「――ウス、紅茶が入りました」
「おう、忍足と岳人の分もだな」
「ウス」
「越前、後で俺達と打たねぇか?」
「はい!」
 越前は赤くなりながら跡部の様子をちらちらと見遣る。これはもしかして、もしかすると――。
「越前、お前、跡部のこと好きなんか?」
 忍足の言葉に越前が狼狽える。紅茶が気管に入ったらしくゴホゴホと噎せた。
「う……何でそんな……」
「越前、案外正直者とちゃうん?」
「忍足さんはヤンキーが嫌いなんスよね? ヤンキーな跡部さんが嫌なら俺にください」
「何でそれをここで言う? 跡部も聞いとるやろ」
「ん? 俺様がどうしたって?」
「越前が跡部のこと好きなんやて」
「こら、クソクソ侑士。そんなこと言ってる場合じゃないだろ」
 岳人が忍足をうりうりと小突く。
「それは……」
 突然の噎せから落ち着いた越前はもごもごと口を動かす。
「あの時は……こんなに素敵になるとは思いもよらなくて……」
「――へぇ、いい感じじゃん。越前と跡部。男同士と言うのがあれだけど」
 岳人がこっそり呟く。
「んー、俺様も好きだぜ、越前」
 跡部が書類に目を通しながら言う。
「えー?! 本当スか?!」
「あかん……越前に跡部取られたで」
 忍足は笑っている。
「あーん? 何か不満か?」
「いえ……そういうわけじゃないスけど……」
「俺様と越前はいいライバルだもんな」
 恋とかそういうものではないらしい。でも、跡部だって好きでなかったら越前の為にヘリ飛ばしたりしない。
 越前はどことなく悄然としている。告白が上手く伝わってないと悟ったらしい。岳人が励ますように越前の肩に手を置いた。



ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。