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お正月初詣SSです(毎年同じでごめんなさい)




「うっわ~すっげぇ人だな。おれらが高校の頃ってこんなに多くなかったよな?」
「たぶん世の中不景気だから、みんな手身近な場所で済ませるんじゃないか?」
テレビで各地の除夜の鐘の中継が始まること、宗治と一緒に近くの神社へとやってきた。
地域では由緒ある神社は深夜だというのに参拝客で溢れていた。
「久しぶりだな~いつもは車で出かけちまうしな」
懐かしそうに歩く宗治の表情を渚はそっと盗み見た。
渚もここに来るのは久しぶりだ。
最後に来たのは・・・確か高校2年の時だったか。
父親に頬を張られ、家を飛び出した大晦日の夜。
行くあてもなく、人の流れに任せてたどり着いたのは近所の神社だった。
楽しそうな家族連れや、肩を寄せ合うカップル。
その中に、宗治を見つけ、年明け早々に会えるなんてと喜んだのもつかの間で。
彼の隣には、フワフワの暖かそうなコートを羽織った、隣のクラスの女子がいた。
深夜にもかかわらずテンションの高い女の子に少し辟易とした表情を見せたものの
腕を取る女の子にまんざらでもない様子で石段を上がっていった。
親に殴られ、上着さえ持ち出せず、帰る場所もない自分はなんと情けないことか。
嬉しさのあまり、先に声をかけずにいてよかったと心底ホッとした。
こんな惨めな姿を宗治に見られたくないから。
「高校の時さ、ここでおまえに会ったよな?いや会ったっつうか・・・見たっつうか・・・」
どうしてそんな昔のことを突然言い出すのか。しかもあの時渚に気付いていたなんて。
「おまえ、声かけて欲しくなさそうだったし、おれも女連れてたし、スルーしたんだけど」
宗治が渚の手を掴んで自分のコートのポケットへと突っ込んだ。
「ち、ちょっとむねは―――」
「大丈夫だって。だれも人のことなんてそんなに気にしてやしないさ」
ポケットの中で宗治の熱を感じる。
「おれ、どうしてもおまえのこと気になって、あれから探したんだけど見つからなかった」
それはそうだろう。渚はあれからすぐに駅前の公園へ向かって一晩過ごした。
そこには寒さを凌げる遊具がいくつかったから。
「そして後悔した。どうして声をかけなかったんだろうって。おまえの淋しそうな表情が頭から離れなかった」
宗治が渚の手を強く握る。渚もその手を強く握り返した。
「あ~気付くのが遅すぎる!おれってほんと失敗の連続だよなぁ。ダメダメだよなぁ」
宗治がため息をつきながら天を仰ぐ。
「でもおれは宗治が好きだよ」
宗治は優しい。もう忘れてしまってもいいような昔の渚のことまで気遣ってくれる。
だから渚は許してしまうのだ。宗治のことを。
「ありがとう、ナギ。おれはダメダメだけど、幸せものだよな~」
繋いだ手が、宗治が渚と一緒にいることを教えてくれる。
「宗治、来年もここに来よう」
渚は誓った。きっといい1年になる。いやしてみせる。宗治とふたりで。






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