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新快SS01 オレのパソコンが、うっかり立ち上がらなくなってしまった。 何も初めてのことではない。最近調子が悪いのだ。使いだして三年目のノートパソコンともなれば、そろそろ寿命と考えるべきだろう。だからバックアップはしっかり取ってある。 「まあ買い替えろって話なんですけど」 けれどそこは貧乏学生だから、本当にお陀仏するまでは使い切りたい。次の季節になれば今の新商品が安くなるはずで、しかしそんなことを思っていたら、ずるずる買い時を逃していることも確かなのだが。よくある話だ。 「パソコン借りるよー」 ちょっとした調べ物があったのだが、そんなわけで今現在オレのパソコンは立ち上がらない。 仕方なしに、同居人、もとい家主兼恋人のパソコンを借りることにした。リビングに放置されていたし、今までも上記の理由で探偵様のパソコンを無断拝借することはあった。一応後でその旨を告げたところ、「おお」としか返事は返ってこなかったから、オレは最大限いいように解釈することにした。つまり、人間だれしも寛大な精神が求められるということだ。 探偵のパソコンには色々とあれな情報も入っていそうだが、少しネットを使うぐらいなら問題はないだろう。何も立ちあげた瞬間に、例えば一般には公開されていない、事件の裏情報などが羅列されるとも思えない。 取って来たアイスを半分程かじる間に、パソコンはすんなりと立ち上がった。オレのノーパソとはえらい違いだ。ネットを開き、検索を幾つか。手慣れた動作なのだが、やはり人のパソコンは勝手が違う。つい間違ったところを、つまりは履歴などをクリックしてしまった。 断じてわざとではない。信じてほしい。本当に。 「……んー?」 わざとではなかったが、開いてしまうと気になるのが人間というものだ。 今どき携帯とパソコン程、その人と成りがわかるものもないだろう。オレだってだれかに自分のパソコンを見られるのは少しばかり恥ずかしい。何せネットで見かけた昔のキッドの写真を保存しているものだから。 「……いやあ、ちょっと、名探偵」 履歴にあったサイトをクリックしたオレは、声を漏らさずにはいられなかった。 女の子のえっちぃ写真でも出てくれば、今度からかい混じりに変装でもしてやろうなどと思っていたのだが、そこは平成のシャーロック・ホームズ、常にオレの斜め上を行ってくれる。 方向性としては間違ってはいなかったのだが、まあつまりは色々嗜好をこらしたバイブやらローションやらコスプレ衣装やらが、これでもかと展示されているサイトなのだった。 間違えてクリックしたのかと思いきや、履歴に並んだ同列のアドレスを見れば、すぐさまそうでないとわかる。あるいは手がけている事件に、何かこうした性癖の犯人でもいたのかもしれないとも思ったが、何だかそれはそれで嫌だ。 「うーん」 一通り眺めてから、まあこれなら着てやってもいいかな、と思ったバニー衣装をブックマークしてやった。丁寧に、サイト名も『これなら可』と変えてやる。あの工藤のことだ、今度パソコンを立ちあげた時にでも、すぐ気づくことだろう。 文句を言ってくるのか、気付かなかったことにするのか、はたまたオレの冗談を真に受けて、このバニーちゃん服を購入するのか。ある日ノリノリでバニー服を出されたら、さすがのオレもちょっと引く……か、案外その場の雰囲気に流されてしまうか、どっちだろう。 その時にならなければ、どちらにしろわからない。 まあ何でもいいかと、食べ終わったアイスの棒をがじがじとかじりながらに、オレはパソコンを閉じたのだった。なるようになれ。 |
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