Side S
うららかな気候、景色、君
「暖かくなったね」
少し前を歩く君は嬉しそうな声で言った。
「そうだね」
青い空と緑の大地の真ん中で歩く君の後姿に相槌を打つ。
「もう桜が咲き始めてる」
そこら中にある木々の中にも君は新しい季節を見つける。
「そうだね」
ボクは先ほどと寸分違わぬ返事をする。
君は少し歩みを速めて、木々の中のつぼみへと寄って行った。
後ろ姿でも良く分かるよ。
君が今どんな風につぼみに触れ
その命にどんな風に微笑み
それらがいかにこの景色に溶け合っているかを
君がいかにこの季節に似合っているかを
「ちっちゃい。みんな、ちっちゃい」
その幼さを慈しむように君は呟く。
あぁ、どうしてこんなにも君はこの時が似合うのだろう。
ボクにはあまりにも不釣合いなこの景色が。
焦がれるのはあまりにも遠いから
手を伸ばせば抱きしめることすらも許される距離なのに
君はあまにりも暖かく
ボクはあまりにも冷ややかだった
「こっちはもう咲きそう」
ねぇどうか、その穢れない笑顔で振り向いてしまわないで
「ほら、見てよスマイル」
愛しすぎて、きっと泣いてしまう