《オリジナル/やさしい支配》


このランプを点けて電気を消すと、この家が海の底に沈むね。
そう言ったら、ずいぶん詩人だと貴志に笑われた。
君だってこれを海の灯のようだと言ったくせに、と言い返したら、そんなに誌的な表現をした覚えはないな、と返された。
まったくああ言えばこう言う。
鴇はそんなに美しいことを言ったつもりはないし、事実、このランプを灯したら貴志だって陽だって同じように思っているはずなのだ。
蒼く揺らめく光は畳や障子や壁を、なにか触れがたいもののように変えてしまう。
外から聞こえてくる風の音さえ静まっている。
何もかも眠りについているかのようなその時間が鴇にはひどく貴重なものに思えて、時折こうして独りきりでランプを灯す。
揺れる海の底の時間。



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