《ワンピース/ゾロサン》


夜明け前の暗いひとときに、ふと眼が覚めることがある。
寝穢い自分にしては大変珍しいことだ。
食い、鍛錬し、そして寝る、その三つこそが剣士を鍛え上げるのだという信念のもとに、ゾロはそれはそれはよく寝る。
動いていないときは寝ている、と言ってもいいくらいに。
そんな自分がまだ暗がりが残るうちに目を覚ますのだから、最初はもしや体調でも悪いのかと訝ったものだが、回を重ねるうちに気がついた。
ああ、と腑に落ちたのだ。
ゾロを起こすものは、この暗がりの中に動くかすかな気配と、そして匂いだった。
日によって違うけれど、快いものであることには変わりない。焼けるパンの匂い、炊けるご飯の匂い、そしてかすかな煙草の匂い。
夜明けの暗がりの中に起き出した麦わら海賊団のコックが、今日の朝食を作っている。
その匂いを嗅ぎながらゾロはもう一度眼を閉じる。
匂いと、気配とを鋭敏な感覚でとらえながら、ゆるゆるとした眠りの中に落ちていく。その二度寝の心地よさを味わうためだけに、夜明け前に目を覚ましているのではないかと、ふとそう思った。



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