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【Sequence.16】

夕日の柔らかな光が遺跡の回廊に射し込み、四人の影を長く伸ばす。
回廊の壁に彫られた彫刻は夕焼けに照らされ、細部が浮かび上がって見えた。
その朱色に彫刻が新たなる命を吹き込まれているかのようだった。

「わたくしの名前はラナ。森を守る最後の一人」

金の髪を揺らし、目の前を歩く美しいエルフは瞳を外へ向けた。
回廊に連なる石造りのアーチから見える中庭には、
枯れた木々が今にも倒れそうな姿で揺れていた。

「この森は魔素が非常に濃く、人々に沢山の恵みをもたらしてきました。
 聖なる水、貴重な薬草、甘美な食物……」

クロムのほうから、ぐぅぅという音が鳴った。
甘美な食物を想像して、腹が鳴ったらしい。
思わずレストとフォッグは、物言いたげな視線をクロムに送る。
今はシリアスシーンじゃないのか。ちょっとは我慢しろ。
二人の目はそう言っていた。
腹の音は我慢できるものではない。不可抗力だ。

「今は、濃い魔素のせいで危険な森となってしまいました。
 生命が生きられないほどになってしまったのです」

何事も無かったかのように話を続けるラナにレスト達は目を見開いた。
このエルフ、強い。スルー能力が只者ではない。

(オレだったら絶対にツッコミを入れてしまっている……)

フォッグは己を省みて相手を称賛し、そして気を引き締めなおした。
だが今はそういう場面ではない。真面目な話をしているところなのだ。
レスト達三人は、とことんズレていた。
ツッコミ役であるフォッグすら、ボケに囲まれる日常のせいで
いつの間にかボケに染まっていたのである……。



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