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とある吸血鬼の話。
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*** とある吸血鬼の話 ***


その場所に来たのは、本当に久々であった。
私が以前、ここに居たのは……さて、何年前であったか。五十年か、百年か、はたまた千年か。

ほとんどの場所の景色は、すっかり様変わりしていた。当然だ。時が経てば、すべてが変化する。
栄えた国は廃れ、新しい国がそれに代わり、また滅びる。

しかし、ひとつだけ記憶と同じものが残っていたので、吸血鬼は目を見張った。

かの覇者の墓だ。時間の経過で風化してはいるが、墓碑はまだ読み取れる。
その名前を認識した瞬間、光り輝く黄金のたてがみの記憶が鮮やかに蘇った。

「我が皇帝(マイン・カイザー)」

無意識に呟く。懐かしい。こんなにも長い人生を生きる自分にとっても忘れ得ぬ、いくつもの戦場と、輝かしい勝利と、変革の日々であった。
平穏な最期を彼に与える代わりに、自分は、あの人生から退場した。

『まだここに居たのか』

ふいに聞き覚えのある声がして、吸血鬼はバッと振り返った。

だが、周囲には誰もいなかった。



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