ミクアリ





「ミクリオ様、着きましたね。」

森の外れの小さな教会。

守護天族を祭るのはやはり神格化されているものが良い、というのが通例だ。

そのため、自然と神殿や教会になるのだが、この教会も例にもれずその場所に適しているか確認しに来た所だった。

スレイが大地へ眠りについてから数年後、ミクリオとアリーシャは少しでも穢れが減る助けができればと

守護天族を探す旅をしていた。

「ここは空気がきれいだね。」

「ええ、敬虔な信仰者もいるようですね。教会がとてもきれいです。」

手入れの行き届いた教会はその管理者の人柄を表すと言ってよい。

総じてそういう人の周りには熱心な信仰者が集まるというものだ。

「そうだね。・・・ん?」

ミクリオの目線の先には真っ白のヴェールが置かれていた。

「花嫁のヴェールですね。結婚式でもあったんでしょうか。」

「そうだね。・・・・アリーシャ、こっちおいで。」

「はい?」

そう言うなり、傍に来たアリーシャへミクリオは持っていたヴェールを被せて見せた。

「ミ、ミクリオ様!!?」

「いいから。」

ミクリオはアリーシャと額を合わせ、祈るようなポーズと取ると、静かに呟いた。

「僕はアリーシャを妻とし、病める時も健やかなるときも愛しぬくと誓います。」

「ミク―――」

「アリーシャ、汝はミクリオを夫とし、病める時も健やかなるときも愛しぬくと誓いますか?」

「―――――ッ」

アメジストの瞳が静かにこちらを射抜いていた。

「誓い、ます」

自然と言葉が零れ落ちていた。




その言葉にミクリオは嬉しそうに破顔すると、そっとアリーシャを抱きしめた。

「ふふ、嬉しいものだね。」

「ミクリオ様?」

「僕たち天族は家族っていう感覚が薄い。イズチのような集落が家族っていうのはあるけど。

 所帯を持つとかっていうのは疎いんだ。だから君たちが羨ましかった。」

「?」

「愛する人と共に生きるって素敵だと思うよ。僕たち天族にはその気持ちが薄いから。

 それに気づかせてくれたのはアリーシャ、君だよ。」

先ほどより抱きしめる腕に力を込めてアリーシャを抱き上げる。

「これが幸せ、っていうんだろうね。こんな遊びのようなやりとりでも、君と家族になれたようで嬉しいんだ。」

キスを落とす。

神の前で花婿が花嫁に落とす誓いのキスのように、そっと。



「ミクリオ様、これは反則ですよ・・・・」

「え?」

「こんなことされて喜ばない女子はいません・・・・・」

恥ずかしくてミクリオの頭に顔をうずめてしまったアリーシャの表情は見えない。

けれど隠し切れていない耳が真っ赤に染まっているのを見て、ミクリオは微笑んだ。

「アリーシャ、それは僕と同じ気持ちってことでよかった?」

「―――――ッ、知りません!」





くすくすくす

ミクリオが笑うと、反射的にアリーシャの顔が上がる。その顔は林檎のように赤く熟れていた。



視線が合って、アリーシャは言葉を失い口を動かすことくらいしかできず。

その様子を見て、ミクリオは再び笑みを深めた。




悔しまぎれにアリーシャが何か耳元で呟くと、


ミクリオはこれまで以上の蕩けそうな顔で破顔した――――――





(私ももちろん―――嬉しいです)









END





ミクアリバージョンで結婚式ネタ
これは天族とは結婚できないでしょとか難しい設定はおいておいて
当人同士の気持ち的なものを意識して書いています
甘々の幸せ目指したんですけどね。
これ、ちなみにエンディング後の成長後のミクリオさんです。



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