basara 幸慶






「なぁ、幸。団子好きか?」




突拍子もなく、そんなことを聞くものだから面と食らって、ものの数秒黙ってしまった。

目の前には答えを期待する無垢なまなざしがあって、若干居心地が悪い気もしたが、しばし思案して正解を探す。

しかし、いくら思考を巡らせても相手の求める答えはわからず、自分の率直な想いを口にした。



「ええ、団子は某の好物ですが、何か?」

「んーん。好きならいいんだよ。」

「慶次殿??」

「ま、気にすんなって!じゃあ後でな!」

「は、はぁ・・・。」

奥歯にものが詰まったようなむずがゆさを感じながら、相手の背が小さくなっていくのを見送る。

追いかけて詳細を問いたいのは山々だったのだが、お館様からの招集を受けていただけに、それは難しい。

チラリと視線で追ったがその真意はやはりわからず、潔く思考を切り替えた。









しかし、翌日その言っていた意味が漸く判明した。



昼下がり、自分の部屋へ彼が団子をもって入って来たのだ。

暖かいお茶も添えて、何ともまあ種類も豊富な団子が膳に乗っており、壮観な眺めであった。

「慶次殿?これは・・・・?」

「え?団子だよ?これは餡子だろ、みたらしに胡麻。こっちは醤油で、こっちはみそ。どうだ?」

「い、いえ・・・それはわかるのですが、こんなに沢山・・・。こんなにたくさんは城下町にもありますまい。」

甘味処が増えたとはいえ、こんなに多種類も用意する店は少ない。

しかもこれほどの種類と量を買うとすれば、それなりに銭も必要となるはずだ。

怪訝な面持ちで、なかなか手を付けられずにいると、隣で男は笑った。

「心配しなくていいよ。俺の手作りさ。」

「ええ!?慶次殿の??」

「ああ。たまにはさ、佐助さんに習って作ってみた。どうだい、食べてみてよ。」

そう言って屈託もなく笑うものだから、嬉しさと感動で思わず抱きしめたい衝動に駆られる。

必死に理性でそれを制して目の前に並んだ団子へと手を伸ばす。

口に入れた餡子の団子はとても甘く、口の中から幸せが広がって思わず目じりが下がるほどだ。

「美味しいでござる。」

「そっか。そりゃ良かった。嬉しいよ。」

「それは某の台詞です。某のためにこしらえて下さったその心持ちが嬉しいでござる。慶次殿、本当にありがとう。」

深々と頭を下げると、慶次は慌てて頭を振ってそれを制す。

困ったような顔も愛おしく感じて、その背を抱き寄せると、そっと自分の背に手をまわしてそれに応えた。







「しかし慶次殿、なぜ急にこんなことを?」

「んー・・・何だかわからないんだけど。

 こうして想い合った相手にさ、相手の好物を渡して想いを伝える日があってもいいんじゃないかなーって思って。」

「なるほど。」

「今はこんな世だけど。いつか平和になって、誰が誰を好きになっても許されて、たくさんの人が幸せな世になったら。

 そんな愛を確かめる日ができたらいいよな。」

「そうですな。某もそう思いまする。」

「だろ?」

幸せそうに微笑む慶次をその腕に抱いて、思わず自分も微笑む。

外は冬だというのに日差しが温かく、その陽気に蕩けてしまいそうになる。

「慶次殿。」

「ん? ―――っ、ん」

「この団子美味しいでござるな?」

口移しで食べさせて。飲み込み切れず口の端についた餡をそっと舐めとった。

甘さが口の中に広がって、そこから幸せがあふれ出るようになって。

思わず目を細めて空を見上げた。



















―――――――――――――――――――――――――――
BASARAバージョンのバレンタインデーです
この話は珍しく男×男です
まあ、女体化慶ちゃんでもいいんですけどね 笑
戦国時代にも恋人同士の幸せな日があってもいいですよね!



ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)
あと1000文字。