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とあるハーレムと副会長 ver.水+栄+田+阿+西→三
これ以上ないほどに頑張って頑張って、やっとこの場所に辿り着いた。
「生徒会」のプレートが掲げられた扉を、感慨深い思いで見つめる。
学年最下位だった学力から頂点に登り詰めた自分を、今日ばかりは誇らしく思う。
ひとつ呼吸を整えて、がちゃりと扉を開け放った。
「っ・・・」
長机に、椅子がいつつ。空いている席は、ひとつだけ。
自分を見つめる視線に気が付いて、一瞬気が遠くなりかける。
それでもあの時から変わらぬその瞳の強さに、ぐっと自身を奮い立たせた。
「あのっ・・・」
すっと大きく息を吸い込む。
潤む瞳を自覚しながら、ぎゅっと拳を握り合わせた。
「好き、です。みんな、すご、く、大好きですっ・・・オレと、付き合ってくださ、い!」
ひと思いに言い切って、はふっと息を吐く。
染まった頬を隠すように、ちらりと様子を窺おうとすると
「かっ、かわいいっっ・・・!」
どがんと椅子を倒しながら、ひとりの役員が立ちあがった。
その顔はだらしなく崩れていて、とても人様に見せられるようなものではない。
・・・はずなのだが、特に気にした様子もなくでれでれと締まりのない顔を惜しげもなく曝していた。
「もういくらでも付き合っちゃう!好き好き大好き、三橋ー!」
「ふえっ!?」
「あー、水谷ずりー!三橋、オレもオレも。チョー好きだぜ!」
「ちょっとー、オレの邪魔しないでよ。田島!」
ぎゃわぎゃわと騒ぎ出した水谷と田島を、三橋は困惑しながら見つめる。
どうしたらいいか分からずに、控え目に2人に呼び掛けてみた。
「あ、あの、それだと話が変わっちゃう、よ・・・」
「別にいいんじゃない?」
それに答えたのは騒ぐ本人たちではなく、何故か反対側からの返答。
三橋は慌てて、声の方に視線を向ける。
「さ、栄口く・・・!」
縋るような瞳に、栄口がにこりと笑ってみせる。
それだけで、三橋はどこかホッとした気持ちになった。
「だって、重要なのはここが三橋のハーレムってことでしょ?」
にこにこと少しも翳ることのない笑顔で、栄口がきっぱりと告げる。
さっきのホッとした気持はすべてまやかしだったかのように、再び三橋は困惑した。
「そ、それも違、うんじゃ・・・」
「三橋のハーレム、即ち正妻はオレってことだな」
問いかける声を遮るように、勢いよく椅子から立ち上がる者がいた。
それを見た栄口の笑顔に、一瞬暗い影が落ちる。
「おとなしくしてると思ったら、ホントにくだらないことしか言わないよね」
「はっ、正妻になれなかった僻みか。みっともないな」
「・・・いつ、阿部が正妻に決まったわけ?」
「当然だろう!オレは三橋の女房なんだからな!」
偉そうにふんぞり返る阿部に、栄口の額に血管が浮かぶ。
その阿部の大声に反応したようで、田島と水谷も我先にと主張し始めた。
「だったら、オレだって三橋のニョウボウだぞ!」
「おまえはたかが臨時だろうが」
「オレは?オレだって三橋の正妻やりたいっ」
「水谷うるさい、正妻は誰がどう見たってオレでしょ」
「ちょ、うるさいって!栄口でいいならオレだっていいじゃん!」
「オレだって!」
「オレに決まってるだろ!」
「オレでしょ」
ぎゃあぎゃあと言い争いを続ける彼らは、完全にこの話の趣旨から外れていた。
せっかくあんなに頑張って台本を覚えてきたのに。
「じゃ、オレと一緒にやろうか?」
「西広くんっ・・・!?」
突然現れた西広は、落ち込む三橋に柔らかく微笑みかける。
そっと三橋の手を取り、強く握りしめた。
「オレの出番まだだったんだけど、みんながこの調子だから」
「お、オレ、台本っ・・・!」
「うん、頑張って覚えてたよね。だから、一緒にやろう?」
「おっ、お願いします!西広君!」
「うん。こちらこそよろしく」
こうして地味な先生役を仰せつかっていたはずの西広は、騒ぐ彼らに向かって薄く笑いながら、三橋と2人仲良く「生徒会室」を後にしたのであった。
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