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お姉様といっしょ
エンジュ。起きなさい、エンジュ。 そう優しい女性の声が聞こえて、ゆさゆさと肩を揺すられるのです。あぁ、ここは昇天の梯の袂。私に声を掛けてくださるのは魂を天へ導く、星空の守り人達なのでしょう。輝く輪を戴き、純白の鳥の翼を背に宿す神の使い。フウラが傍にいない事を思えば、予言が正しかったならば、私の可愛い妹分は無事に生き延びられたのです。それを思えば、死の間際の凄まじい衝撃など瑣末な問題でした。 それにしても、優しく美しい女性の声。どのような神の御使いが私を迎えに来てくださったのか、死んだ肉体によってもたらされた魂の気怠さより好奇心が上回りました。私はゆっくりと目を開けたのです。 そこには私よりも少し年上だろう、若き女性が座っていました。しかし幼き子の母と形容するべき落ち着きと母性を持っていて、白い肌、古き伝統の結い上げで結ばれた緑の髪と衣、若さと円熟が同居した不思議な女性でもありました。エルフ族独特の尖った耳、ヒメアさまやニコロイ陛下のような、エルフ族に稀に生まれる長身のもの、背中の翅も虹を帯びて大きい。 しかし、そのお姿を見て私は目が飛び出しそうになりましてよ。 「エルドナ様!」 私は飛び起きてエルドナ様に向かい合うように正座いたしました。三つ指を揃えて、地面に額を押し付ける。我らが種族神、我らエルフ族の母を前に、のうのうと惰眠を貪っているだなんて、恥ずかしさのあまりプクランドの底なしの穴に飛び込んでしまいたいですわ! エルドナ様はころころと鈴を転がすように笑うと、地面に着いてしまいそうな肩にそっと手を置きました。 「畏まらないで、エンジュ。寂しいわ」 ほっそりとした手が、私の顔を上げさせようと促すよう背中を撫でていく。 「フウラも貴女の『妹』ではなく『風乗り』と見られた時、どんなに寂しさに胸を痛めたか」 確かにスイの塔の最上階で風乗りの衣を着て、エルフの民が羨望の眼差しを向ける風乗りの姿となったフウラを見て胸が高鳴りましたわ。でも、その時の私はフウラと袂を分つ決意をしていました。私は大地の箱舟に乗り、二度とエルトナを支える風乗りの前に姿を表す事はないときめていたのです。 その直後にフウラに天高く拉致られて、彼女の心情を押しはかる暇はありませんでしたわ。でも、泣き虫で寂しがりやなフウラでしたら、私が離れる事を察したら悲しくて体の水分が全部涙になってしまっていたでしょうね。そう思うと、少しだけ口元が綻んでしまう。 私は顔を上げて高貴なる我らが母を見たのです。 「エルドナ様はフウラではありませんわ」 いいえ。エルドナ様は緩く首を振りました。 「器を通して世界を見る私達にとって、器の人生は我が身に起きる事に等しいのです。フウラが感じていた憧れ、一人娘のあの子が姉を得た喜び、貴女の頼もしさを私も感じていました」 胸に手を当てると、エルドナ様は柔らかく微笑みました。 「私は長女でしょう? 上にはナドラガ兄様がいましたけれど、お姉様はいませんわ」 だから。目が眩しそうに細められる。 「お姉様とこうして会えて、私はとても嬉しいのです」 先ほど死んだ以上の衝撃が、胸を貫きましてよ! 胸を押さえたまま、心の声が迸る。 「エルドナ様! なんとお可愛らしい!」 私、可愛いエルドナ様のお願いを、なんでも叶えて差し上げましてよ…! ナドラガンドで死亡した際に、種族神と出会ったエンジュちゃんの話。 加筆修正でフウラちゃんの妹属性がマシマシになったので、エルドナ様もそう思ってそうだなぁって思いました! 拍手に感謝!ぱちぱちっとありがとうございます! |
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