孫に良縁 1/2

 ホーロー。そう麗しい女性の声で名前を呼ばれれば、うきうきと心弾ませて振り返るものじゃが、このルシェンダ様に関してはそうはいくまい。
 いや、ルシェンダ様が美しくないとか、そんなんじゃないぞい。例え他種族であっても豊満で瑞々しい体格は、健康的な美の象徴として魅力的じゃ。髪の毛は丹念に手入れされて絹糸のように細く艶やかで、爪は華美ではないがさりげないネイルアートで煌めいておる。化粧は決して濃くなく、ルシェンダ様の美しさを引き立てる絶妙な具合。その美を飾る化粧はアストルティアの最新トレンドでひと月も掛からずに、世界中の女の子達を彩る事になるじゃろう。
 ぎくりと体を強ばらせたのは、ルシェンダ様から課せられた宿題に進展が見られぬからじゃ。
 いや、ワシじゃとて真面目に取り組んではおるよ?
 じゃが、アクロバットケーキにチョコ味が出るとか、女王様サブレにセーリアちゃんの絵柄が出るとか、グレンとアズランのコラボで噛めば歯が砕けるとチャレンジャーが続出する拳骨煎餅が出るとか期間限定商品が本当に多いんじゃよ。まさに戦争。これに最近は転売をして荒稼ぐ不逞な輩が現れるものじゃから、これを成敗してゲルト海峡に吊るして晒してやったりと忙しいんじゃわい。
 執務机の前に罪を言い渡される罪人さながらに進み出たワシに、足を組んだルシェンダ様は威厳ある声色でおっしゃられた。
「お前には孫がいるな?」
 え? えぇ。ワシは目をぱちくりして肯定した。
「お前の孫自慢で夕方まで聞いてやる暇はない。百文字でまとめてもらおう」
 うぐっ。ワシの孫自慢は長くて賢者仲間が全力で逃げ出すからのぉ。エイドスはいつの間にか『るすばんエイドス君』と入れ替わっていなくなり、ブロッゲンはぐぅぐぅすやすや眠って聞く気がない。ルシェンダ様に至っては『一方的な孫自慢ほど苦痛なものはない』と、実力行使で止められてしまう始末じゃ。賢者仲間の間でやりとりする交換日記を、孫自慢で一冊全部使い切って、新しい日記を買ってこいとパシリにされた事もあったの。
 まぁ、仕方がない。ワシの可愛い孫のシンイを自慢する機会があるのなら、罠でも陰謀でも語らなければなるまい!
「シンイは究極にプリティーで最高にインテリジェンスな自慢の孫です。何が自慢って、ワシの血を引いて魔術の才能に引いで、ワシの連れ合いの能力で未来を視る事もできる。こんなハイブリットでありながら驕らず丁寧な物腰で、弱者を守る熱い正義感を持ち合わせている!こんな素晴らしい子が! ワシの! 孫! 生まれた時の無垢で円な瞳がワシを見た時、ワシはグランゼニス様がワシに天使を遣わせてくだ…」
「百文字をとうに過ぎた。十分だ」

瓦煎餅みがありそうな拳骨煎餅。ちょっと興味あります!!!
続きは次に用意してあります(見れなかったら連絡ください)

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