『ぐわああああああ!!!なんだこの空気はぁあああああ!!!』
 おぞましい悲鳴に視線をあげれば、居酒屋『大魔王』の店主さんのお帰りです! 私はぺこりと頭を下げ、店主さんをお出迎えしました。
「お帰りなさい、ゾーマさん。言いつけ通り、お店の管理はばっちり大丈夫です!」
 ゾーマさんはアストルティアで行われる大きな催しで、長期間お店を離れるのです。その間のお店の維持管理を、ゾーマさんは私に一任してくれたのです! 一人前と認めて嬉しいです! 発注も料理の味も掃除も全部大丈夫です! 魔物の方にもご好評いただいて、これを機に魔物の方との接し方をきちんと勉強して今後に役立てたいと思います。
「しかし、お帰りはずっと先だとお伺いしたのですが、どうされたんですか? 忘れ物ですか?」
『メンテナンスというもので、まとまった自由な時間を得たのでな。店を見に来たのだが…』
 ゾーマさんはぐるりと店内を見渡します。その目元は忌々しげなものを見るが如く、深いシワを刻んでおります。勇者ですらきっと裸足で逃げてしまいそうな、鬼気迫るお顔にございます。
 掃除、念入りにしているんですけど、問題があるんですかね?
『臨時従業員! 何故にこの空間は、これほどまで清い空気でみたされているのだ!』
「さすがゾーマさん! 実は新しく繋がった世界の方が、お祝いに世界で最も有名な木の苗木をくださいました! 素晴らしい浄化能力で、掃除では取りきれなかった邪気が一掃されて清潔感あふれる店内になりました!」
 じゃーんと促した先には、可愛い盆栽が一つ。艶やかな葉はうっすらと光り、天使界さながらの空気を居酒屋に再現してくださいます。ゾーマさん、その盆栽をガッと掴むと荒々しく持ち上げてしまいました!
『この居酒屋にそんなヤバいものを置くな!』
「駄目ですよ! 引っ越し蕎麦が良かったなんて、今さら言えません!」
 必死にしがみつくも、相手は見上げるほどの巨体です。鉢を取り返さないと、盆栽が壊されてしまいます。
 すると盆栽が輝き、ゾーマさんはもがき苦しみながらその場に蹲ってしまいました。
『なんという聖なる気…力が…出ぬ…』
「人類皆、作戦は命を大事にです。盆栽さんを丁寧に扱わないゾーマさんが悪いんですよ」
 きらきら光る盆栽さんを取り上げ、ゾーマさんを睨みます。
 『ぐぬぬ…』忌々しげに光る盆栽を見上げるゾーマさんですが、本気で動けなさそうです。これではアストルティアの方々にも、これからの居酒屋のお客様にもご迷惑になってしまいますね。そう言えば、盆栽を持ってきてくださった殿方が『浄化作用最大にしておくね』と言って、手をかざしていたので盆栽さんの力を制御できるのかもしれません。
『盆栽にすら屈するとは…。我が絶望が美味い…』
 がくり。ゾーマさんが倒れてしまわれました。

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