ありがとうございました!










 夏の物語ばかり読んでいる。

 冬の凍える空気。強く神経を張りつめていなければ、立ってもいられないような冷気だ。吹き付ける雪は、皮膚を氷らせ肉と筋を氷らせ、やがては骨と血流までも氷らせる。
 そうしてすべてが一塊の氷となり、やがて春がきて、ようやく届いた陽射しが指先を暖める。
 氷った身体は陽光に耐えられない。ぴしりとひび割れ、全身に亀裂を刻み、氷の心臓がかん高い音を響かせて砕け散ると、割れた身体はからから崩れてゆくのだ。

 窓から雪を眺めていると、そんな夢想ばかりしてしまう。魅惑的な、氷として消滅する方法に心を奪われて、雪原にとびだしてしまいたくなる。
 だから夏の物語ばかり読んでいる。
 くっきりと濃い蔭をつくる強い陽に射られて、雪が見る間に溶けて空気へ還ってゆく。氷への憧れを灼きつくす光。
 よく暖まった部屋の中、ありったけ着込んで、雪の消えゆく景色を想像しながら夏の物語を読む。

 氷になどならずに君の帰りを待つために。








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