いつも「ひみつのかくれが」へご来館頂き、誠にありがとうございます。
この「断片」と称しました一枚のページは、本来であるならば他者の目につかぬようひっそりと隠されるはずのものですが……さて、どこから出てきたのやら。
栞代わりにでも本に挟んでおきますので、ご覧になりたい方はお好きなように――。




『伝説は今、新たな役者を舞台へ――。
 「The Knight of Wicca」、来春公開!』
 その予告編を見たスコールは、何となく不愉快な気分になった。

魔女の騎士は未来の夢を見るか? Act.1 断片

「え、どうして? 面白そうじゃない」
 目的の映画を見終わり、ジューススタンドでリノアは首を傾げる。
 スコールは先刻から無口だ。見たがっていたスペースアクションを見た後なのに、少し沈んだ顔付きでグレープフルーツジュースをストローで掻き回している。不審に思ったリノアが問うと、何と本編の前に流れた新作予告編のせいだとスコールは話した。その新作の名は、「The Knight of Wicca」――「魔女の騎士」。かつてラグナが主演したという「魔女の騎士」をリメイクし、現代劇にするつもりらしい。
「悪くないと思うけどなぁ。まぁ、主演俳優がちょっとカルい感じなのがちょっと不満ですけど、ヒロインさんは割と可愛いしなぁ」
 楽しそうに話すリノアを、スコールは少し恨めしげに見遣る。
(どうして、そんな風に言えるんだか)
 わかってるのか。俺達、勝手な憶測で茶化されるんだぞ。
 スコールの不満はこの一点に尽きた。
 映画は、第三次魔女戦争――通称第三次大戦、スコール達が終わらせたあの戦争だ――を舞台とし、その中で出会った魔女「ウィッカ」と傭兵団「フェンリル」に所属する少年との話に終始するらしい。ベタベタのラブストーリーになりそうな予感がする。
 スコールはジュースを煽ると、軟らかいプラスチック製のコップを握り潰した。
(俺達が、どんなにか苦しんだかも知らないで)
「スコール」
 うに、と眉間に指が押し当てられる。目線を上げれば、リノアは柔らかい笑顔でスコールを見ていた。
「そんなもんだよ、世の中の人にとっては。第一、わたしってば存在疑われてるしねぇ」
 リノアがけらけら笑っている理由には、それもあるのだ。
「良いじゃない、封切られたら楽しんで見ようよ。わたしね、ちょっと楽しみなんだ」
「……そうか?」
 リノアはこっくり頷く。
「スコールとわたしを、世界がどう思ってるのか気になる」
「…………」
 過日、主要国のトップを集めた会談の場で、スコールとリノアの処遇が決まった。
「満21歳まで、ガーデンで保護観察処分とする」。
 それが結果だ。スコール自身が望んだ通りの結果だった。同じ人間だというのに、何故隣人が当たり前に暮らして、自分達は静かな生活を営むことさえ拒絶されなければいけないのか。魔女アルティミシアを憎しみの淵に堕としたのは、正しくその考え方の為ではないのか。スコールは切々と語り、ただそっとしておいて欲しいのだと嘆願した。そして、事実そうなったのだ。おかげで、スコールもリノアも今まで通り安らかな生活を送っている。
「悪くない描き方だと良いなぁ」
「……悪くはならないだろ。ヒロインが美人だから」
 スコールはそう言うと、リノアが飲んでいた空のカップを取って立ち上がった。リノアは慌てて食ってかかる。
「え、スコールってばああいう清楚系美少女が好み?!」
「おい、飛躍しすぎだろ」
 彼にとってはヒロインより可愛いリノアの言葉に、スコールは苦笑して手を差し出した。

 その数日後、スコールは世の中の不思議と不条理に直面することになる。

End.



ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)
お名前 URL
メッセージ
あと1000文字。お名前、URLは未記入可。