休み時間の友人の名言ベストファイブ 1 






「空を飛びたい」

 午後の授業のために教室へ帰っている途中、廊下で窓を眺めて啓吾が言い出した。

 目は、完全に遠い空を見ている。

「飛ぶんだ! 空高く! 翼を広げて――っ!!」

「それでお前はどこへ行く」

 両手を広げて、それこそ飛んでいきかねない啓吾の襟首を掴むのは一護だ。

「どこまでも――っ!! 遠くへ〜〜っ!」

「うるさいよ君」

 ジュースのパックを片手に、もう片方にはケータイを握ったままの水色は言う。

 啓吾の変な発言はいつものことなので突っ込む気すらゼロだ。

「……なにかあったのか?」

「ちゃぁぁどぉぉ!」

 唯一心配してくれたチャドに感激し、啓吾は両手を広げたままチャドに突進する。どーん、と体当たりしたものの強固なチャドの身体に見事に跳ね返され、啓吾は廊下に転がった。

「あーあ」

「そうなるのくらい、想像付くだろうがよ」

 呆れたような声を出すのは水色と一護で、雨竜は先ほどから黙って遣り取りを眺めている。

「ヒドイ、ちょっとくらい心配してくれても良いのに……」

「だから、チャドが心配してくれてんじゃねーか。勝手に激突してダメージ受けたのはテメーだ」

「一護、冷たい……!」

 ガビン、とショックを受けて壁に頬を擦り付ける啓吾は言う。

「もう、昨日も今日も明日も明後日もあの鬼姉の使いっぱで、彼女は出来ねーしテストは赤点だし」

「最後の方のは自分の責任じゃない?」

「もういっそ、この場から抜けて遠い大空へ羽ばたきたくなっても、それはそれで青少年として仕方のないことじゃなかろうか!?」

「もう、意味解ンねェ」

 どうやっても同情してもらえない自分によよと泣き崩れる啓吾の肩を、それまで黙っていた雨竜が優しく叩いた。

「浅野君」

「石田……!」

 もしかして、お前は俺の辛さを解ってくれるのか!

 感激する啓吾に、眼鏡を押し上げながら雨竜は言う。

「鳥の骨は空洞なんだって。中身が詰まってない分軽い、だから飛べる。解るかい? 君、それでも飛ぶって言うのなら自分の骨を作り変えなきゃいけない」

「――っ!!」

「あはははは!」

「……ム」

「っ……石田、オメー……それが一番キッツイぞ……」

 ショックを受けた啓吾とどこまでも真面目な雨竜を見て、水色は腹を抱えチャドは納得し、一護は絶句した。



 後日、滅却師の飛簾脚を思い出した一護は

「じゃぁ滅却師って代々骨が空洞なのか?」

 と尋ねて

「そうじゃない! 君は僕の説明を何一つ覚えていないのかっ!!」

 と、雨竜に盛大に怒られたのだった。







御題提供 207β









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