「よーし、今日の練習はここまでで〜!」
葵くんの声で、今日の部活もおしまい。
片づけをしながらも、今日こそは、と思うこと。
一度ぐらい、放課後デートをしてみたい・・・!
部活も一緒だし、帰りだって一緒だけどね? でも、必ずみんな一緒なの! 二人きりでってことなんて一回もないの!! 休日だって部活だったりみんなで海行ったりしてるから、本当に二人きりって滅多にない。 私たちって、本当に付き合ってるのかなぁ・・・。
「あーあ」
思わずため息が出る。 と、後ろから頭を叩かれた。
「なにが『あーあ』なのさ?」 「虎次郎・・・」
その姿は、間違いなく今まで思っていた相手。 悔しいけど、本当にかっこいい。 と、これはせっかくのチャンス! 今のうちに言っておかないと・・・
「サエさん達〜!今日帰りに海行きませんか〜?」
という葵くんの声。 あぁ、やばい。 ちょっと待ってよ!これじゃあまた。
「おう、わかった」
・・・と、虎次郎が返事して。 今日もまた、みんなで仲良く海遊び決定。
「なんだよ、どうした?」
突然虎次郎が顔を覗き込んできた。
「な、何が?」 「嫌な事でもあっただろ?お前すぐ顔に出るからな」
そういうことはすぐに見抜いちゃうのに。 どうして、気持ちまでは見抜いてくれないのかな。
「今日は、一人で帰る」 「え?」 「じゃあ、また明日ね」
それだけ言うと、急いで教室に戻った。
みんなでいるのが嫌なわけじゃない。 でも、たまには二人っきりの時間だって欲しいってこと。
「わかって欲しい、なんて、私のワガママなのかなぁ・・・」
ふと窓の外を見ると、葵くんやダビデ、バネさん。 亮くんにいっちゃんも、みんな楽しそうに歩いていった。
・・・あれ。 虎次郎、は?
「まだここにいた」
振り向くと、入り口に虎次郎が立っていた。
「あれ、みんなと海行ったんじゃないの?」 「お前の様子変だったからさ。そのまま行けないだろ?」 「別に、なんでもないよ。たまには男だけで遊びたいかな〜って思ったからさ」
これ以上言ったら、嫌われるかもしれない。 そう思ったら、なんでだか必死に言い訳している自分がいた。
「『わかって欲しい』って、俺にでしょ?何をさ?」 「聞いてたんだ・・・」 「言ってくれないと、俺わかんないよ?」
他の事は全部気づいてしまうのに、なんで? なんでこれだけ、わかってくれないの?
「私達、付き合ってるんだよね?」 「あぁ」 「でも、いっつもみんな一緒で。二人っきりの時間なんて、全然なくて」
虎次郎がじっとこちらを見ているのがわかる。 呆れてるかもしれない、嫌われちゃったかもしれない。 そう思っても、口は止まってくれない。
「未だにキスだってしたことないし、本当に、付き合ってるのかなって。私だけ、好きなんじゃないかって」
そこまで言った時、突然視界が真っ暗になった。
「あ、あれ?」
それが、虎次郎に抱きしめられてるんだってわかって、顔が熱くなる。
「好きだよ」 「虎次郎」 「ごめん、本当はなんとなく気づいてた」
え? 気づいてたの?
「じゃあ、なんで」 「二人になりたいってのは、俺だって当然そうだけどさ」
虎次郎が一瞬息を呑んだのがわかる。
「抑える自信、ないんだ」
顔を上げると、真っ赤になった虎次郎の顔。
「・・・あんまり見ないの」 「だって、なんか意外で」 「好きだからこそ、怖がらせたくないし。みんなと一緒なら、それもないだろ?」
それってつまり、大切にしてくれてたって事だよね? なんだ、そうだったんだ。
「でも、今のお前の言葉聞いて安心した」 「へ?」 「お前もそう思ってたってわかってさ」 「そう思ってた、って・・・?」
なんとなく、嫌な予感がする。 と、目の前には虎次郎の顔。
「こ、虎次郎」 「目、閉じて」
言われるがままに目を閉じると。 降ってきたのは、優しく甘い、ファーストキス。
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爽やかラブ。サエさんってこんなキャラか・・・? 楽しんで頂ければ光栄です。 拍手、ありがとうございましたv
Kirsche管理人:愛美・もも
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