裏庭にある大きな木の木陰。
昼休みはいつも、私と彼の二人きり。
「はぁ〜、おなかいっぱい。ごちそうさまでした」
と、一人つぶやいてお弁当箱をしまう。 その隣では、
「ぐ〜・・・ぐ〜・・・」
今日もすっかり熟睡。 『寝る子は育つ』っていうけど、キミの場合はどうなんだろう?
そんなことを考えながらも、いつものようにおやつを取り出す。 今日はコンビニで新しいポッキーが売り出されてたんだ。
箱を開けると、すでに甘いチョコレートのいい匂い。 すると、突然彼が起き上がった。
「なんか、甘いニオイがする〜!」 「あれ、ジロちゃん起きちゃった?」 「だって、すっげー美味しそうなニオイすんだもん。目ぇ覚めちった!」
と、目をキラキラさせてポッキーを見つめているジロちゃんはすごく可愛い。
「じゃあ、一緒に食べよっか」 「やっりィ!早く早く〜!」
袋を開ければより広がる甘い香り。
「はい」
と、ポッキーを差し出すと、受け取ってくれない。
「・・・ジロちゃん?いらないの?」 「んー、そうじゃなくて・・・」 「ん?」
ジロちゃんは、少しの間をおいて、言った。
「あのさ、『あ〜ん』っての。あれがいい!」
・・・突然なんて事を言うのかな、この子は。 いくら付き合ってるとは言っても、それはかなり恥ずかしいんだけど・・・。 隣を見れば、期待に満ちた眼差しがこちらをじっと見つめていて。 もう、そんな目されたら断るわけにいかないじゃない。
「もう、しょうがないなぁ。はい、あーん」
そう言うとジロちゃんは『あーん』と大きく口を開けた。 そこにポッキーを持っていくと、ぱくっとくわえて。
「うん、超おいC〜」 「それはよかった」
と、再びポッキーを取り出すと。
「あ、俺あれやってみたい!ポッキーゲームってやつ!」
今度は何ですか・・・。 しかもあれってかなり恥ずかしいよ? さすがにカンベン・・・。 でも、隣では期待に満ちたような、それでもって上目遣いでこちらを伺うような目。
・・・あぁ、もうそれも可愛くて断れないんだってば!!
「・・・これでいいの?」 「うん!やった〜!」
そして、私がくわえた反対側をジロちゃんがくわえる。
カリッ、カリッ
音だけが妙に響く。 そして、距離が数センチまでにきたとき、ポッキーが二つに別れた。
「あ、終わったね」
と、離れようとしたら、突然右手でぐいっと引っ張られて。 左手で後頭部を押さえられ、そのままキスされていた。
「んっ・・・こら、ジロちゃん!」 「へへっ。今のが一番甘くて美味しかった♪」 「もう、知らないっ」
そう言ってそっぽを向くと、その腕で向きを戻されて。
「あれ、わかんなかった?んじゃ、もっかいする?」
なんてあの笑顔で聞いてくる。 こうなったらもう、完璧覚醒モード。
「あの・・・ジロちゃん?」 「オメェ、すっげー甘いんだもん。だから、もっとちゅ〜しよ?」
もうすぐ昼休み終わるんだけど、こう言われてしまうともうこっちの負け。
「しょうがないなぁ、ジロちゃんは」
と、ジロちゃんの首に腕を回すと、ジロちゃんは嬉しそうに笑った。
5時限目は、サボり決定みたいです。
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ジロちゃんは絶対天然な策士だと思う。その割に偽者だよジロちゃん・・・! 楽しんで頂ければ光栄です。 拍手、ありがとうございましたv
Kirsche管理人:愛美・もも
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