今日の家庭科は、調理実習。
しかもクッキー作りだから、女の子は作る前からドキドキソワソワ。
「ねぇ、誰にあげる?」 「やっぱり不二くんかなぁ。『ありがとう』とか言ってくれそう!」 「私はやっぱり菊丸くん!可愛いもん♪」 「可愛いよね〜!私も菊丸くんにあげよっかなぁ〜」
・・・お目当ての人物は、やっぱり大人気。
「なぁ、今日は女子クッキー作んだろ?」 「そうだけど?」 「んじゃさ、お前作ったヤツ、俺が食べてやるよ」 「ちょっと英二、何よその『やる』って」 「まーまー気にしない気にしない。お前のクッキー、楽しみにしてるかんな」
放課後、改めて自分のクッキーを見てみる。 とてもじゃないけど、クッキーとは呼べない別のもの。 さすがにこんなの英二に渡すわけにはいかない。
英二は他の女の子からもいっぱいもらってたし。
しょうがない、やっぱり自分で処分するしかないかぁ。
と袋を開けたとき。
「こぉらっ!!」
と、いきなりそれを取り上げられた。
「え・・・英二?」 「俺が食べてやるって言ったのに、な〜んで一人で食べようとしてんだよ」 「だって、英二いっぱいもらってるみたいだし、私の出来悪いから」
そう言うと、英二は“はぁっ”と大きなため息をついた。
「そーゆー問題じゃなくて、俺が食べたいんだから、お前は俺に渡してくれればいーのっ!!」
・・・ん? 今、この人なんて言った? 確か、私のこのクッキーを『食べたい』と・・・。
「ほ、本気?」 「当たり前だろ〜?」 「だ、だって」 「ん?」 「焦げてるし、苦いよ」 「甘さ控えめでいーじゃん。そんじゃ、早速一枚いただきっ」
と、英二はその焦げ焦げクッキーを口の中に入れた。
「・・・どう?やっぱり苦いでしょ?」 「お前の味」 「は?」 「甘すぎなくて、ちょっと苦味が効いてるとことかさ。お前っぽくない?」 「そう、かな」 「そうなの。だから俺、この味好き」 「はぁ・・・こんな味のでよければ」
そう答えると、今度は英二は『わっかんないかな〜』と首を傾げた。
「もっと言えば、お前自身も好き、なんだけどな?」
「・・・えぇ!?」
「お前の事が好きだから、お前に似たこのクッキーも大好き。それぐらいわかれよなぁ」 「わかんないよ、そんなの!」 「じゃあ・・・」
“ちゅっ”
「これなら、わかる?」
突然の出来事にしばらく呆然としてしまう。
「あれ、わかんなかった? そんじゃもっかい・・・」 「わー、もうわかったから!!」 「よおし、そしたら、これからこのクッキー食べるのは俺だけな?」 「う、うん」 「あ、クッキーだけじゃなくて、お前もな♪」
これからは素敵な学園生活、になりそうです。
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なんか偽者英二でごめんなさい・・・。 楽しんで頂ければ光栄です。 拍手、ありがとうございましたv
Kirsche管理人:愛美・もも
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