拍手有難うございます。お礼小説は八神母子となってます。現在これ一本です。












日常から非日常な日常へ。そして戻ってきた日常。

世界は、こんなにも味気無いものだったのだろうか。

ぽっかりと空いた閑寂という大きな穴。

家族も、友人も、変わらずにいるのに。

それでも埋まることのない穴。

この穴を埋めてくれる存在は、この世界には、いない。

それが判ってしまっているから埋めることが出来ない。代わりに埋めるものなんて、ない。

ズルズルとダラダラと。

クラブにも行く気がしなくて、次第に顔を出さなくなった。

何をするにも億劫で。日課だったロードワークにもしばらく出ていない。

これじゃ身体が鈍るなと客観視する自分が思う。

けれどそれがどうした。

無気力な世界。





母さんたちが心配しているのは知っている。だからいつも通りに振る舞わなければ。しっかりしなくてはと思う。

だけどごめん。だめなんだ。

ぽっかりと空いてしまった穴がどうしても埋まらない。埋められない。










「母さん。俺、クラブ辞めようと思う」

「そう」

静かに母さんが言う。何で、とか、どうして、とか問い詰めることも、頭ごなしに問い質したりしない。そういうトコ、スゴイと思う。

「サッカー嫌いになった?」

違う、と小さく頭を振る。

好きとか、嫌いとか、そういう問題ではないのだ。

ただ、ただ。

寂漠という感情が大きく蝕んでいるのだ。

何かをやりたいという衝動が生まれない。

何かでごまかそうとすればするほど寂漠感が増してくるのだ。





「分かったわ」

その言葉に小さく息を吐く。

だけど。

「でも。出すのは退部届けじゃなくて、休部届けにしときなさい」

「母さん―――?」

「色々あったのよね。お母さんたちの知らない所で、お母さんたちには分からないことが。

 一杯、色んなこと経験したのよね」

頭を抱き寄せられて、撫でられる。小さな子があやされているようで少し照れ臭かったが、

それ以上に心地良くて、そのまま頭を預けながら聞く。

「だから、今はゆっくり休みなさい」





「嫌いになったわけじゃないならまたやりたくなるかもしれないでしょ。気持ちの整理がついてからまた決めればいいわ」

だから今は休むだけ休みなさい。

ね?と最後にもう一度頭を撫でられる。

「―――うん。ありがとう母さん」





母さんには視えていたのだろうか。この未来(さき)にある再会が。











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