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―月に寄せる恋―


このところかかり切りだった研究が、完全に行き詰まってしまった。
阿近は小さく溜息をつくと、技術開発局の外へ出た。

外は夜だった。
中天に輝く丸い月のおかげで、外は存外に明るかった。
月の明かりは冷ややかに、青白く辺りを照らして、世界を深く静かな藍色に変えている。
その光景が何かに、似ていた。
だが、何なのかが、思い出せない。
阿近はしばらく、呆然と立ち尽くしていた。
それからひょろりと細長い身体を猫背にして、黙々と歩き続けた。
そして不意に顔を上げると、慌てて地獄蝶を放った。

ほどなく、息を切らしてルキアがやってきた。
「どうしたのだ?!至急来い、などと―」
言い終わる前に、ルキアの小さな体を阿近が抱きすくめる。
ルキアは薬品の匂いのする白衣の間から、そっと見上げた。
「…寂しかったのか?」
深海を思わせる、澄んだ藍の瞳だった。
「寂しくなんかない。お前が足りなかっただけだ」
ルキアは少し驚いた顔をして、それから柔らかく笑った。
「…そうか。足りたか?」
「いいや、まだだ」
夜露を吸うように、そっと、唇を重ねる。
深い藍色の世界に、阿近はゆっくりと溺れていった。



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